詩-160 あなたひとり

ひとり 通りに立つ ひとり 街を歩く ひとり 天を仰ぐ ひとり 運河を心に描く ひとり 住まいの階段を昇る ひとり 鏡の前で顔を洗う ひとり 花瓶の花を整える ひとり 窓からの風を胸に吸い込む ひとり 豆のスープを飲み ひとり 羽根枕に頭を乗せる ひとり ひと…

詩-159 秋

秋は来る あなたのほつれた髪を見ても 何とも思わなくなったときに 秋は来る 赤ん坊のようなあなたの手指を見ても 心が揺れなくなったときに 秋は来る あなたを想像しながら 自分の鏡に向き合わなくなったときに だからそのとき 秋はやって来る 私からすべて…

詩-158 蠢くもの

夏 冬 関わりなく 私の腹を掻き回し 自転する もの 大きな大きな蚤のような 邪悪とも 安らぎとも取れる おまえ おまえよ 私が悪かった おまえを感知しない私は おまえの体に傷をつけ おまえを藁の束のように手荒に扱い、投げつけ おまえを無視し おまえの動…

幸せは、些事を匙ですくえばこそ。

私はこの社会ではこれっぽっちも幸せではない。全くもって、何ひとつ、幸せなんかではない。 けれども夜明け前、小鳥たちが無事に目を覚まし、これから今日一日、ケガをすることなく羽ばたき空を舞い、みみずや羽虫といった糧にありつけ、夕方になればいつも…

詩-157

クルマから列車から 外を眺めちゃいけない 冬の雨降りの夜なんか 観察してちゃいけない記憶なんかやめて 君を消すんだ 楽になることを 時には選んで 円錐形の先っぽに向かうように 吸い込まれればいい君は誰だ、さあ誰だ その問いかけこそ 大切だ 塗り直せ、…

詩-156

馬鹿げた夜を思い出した、 馬鹿げた景色を思い出した、 馬鹿げた熱狂を思い出した、 馬鹿げた恋と僕自身を思い出した、君がまったく違う方向を見ているのは良いことだし 僕がまったく違う方向を向き始めたのも良いことだろうあの暗がりは とても美しかったけ…

今日一日の自分のための、仮定話

自分に好きな人がいたとする。 そしてその人はこちらのことを、取るに足らない未熟で幼稚な者だと考え、バカにしていたとする。 自分はそれでも構わない。 その人が最後の最後、(瀕)死の床についたとき、もし笑顔で静かにその人のもとを訪ねることができた…

詩-155

僕は灰色から つまらない銀色に固まった 夜はとても綺麗な 深いラベンダーと群青色で 僕に写真を撮らせてくれたのに そして 時間も 止まってしまった 嘘だと信じたいことが 僕の見えないところで 起きてしまう 古びたカメラのフィルムが ひらひら ひらひら …

詩-154 空、鳥、赤い消失

僕は君のようには言わない 言えない 言いたくない 心がないから これは続きようのないことだから君がそう言うなら そういうつもりなら 僕を手放すことが 君が僕にくれる いちばんの贈り物飛ばせて ここから 君から 離れさせて 君は僕の幸せじゃ、ない。 JJ72…

雲がかり

なぜだか全く理解できないけれど、生まれ育った東京の景色よりも、イギリス北部の景色のほうが、自分にはしっくりくるし、気持ちが落ち着く。ずっとずっと昔に、こんな自分を好きになってくれた奇特な人がいたからかな(笑)。随分とおかしな旅をしてきたも…

音楽 地 靴底にへばりついた泥

音楽ファンには『てめえ、贅沢言ってんじゃねえよ』と非難されそうですが。私は全くもってただの偶然で、しばらくのあいだリヴァプールに滞在し、全くもってただの偶然で、しばらくのあいだマクルスフィールドにも滞在していたことがある。リヴァプールとい…

題名すらつかない午前のぼやき

会いたい人がいる。 どうやったって会えない人だ。 たとえ仮に私がどこぞの国の億万長者で成金御殿に住んでいて、今持ち合わせているすべての財産をその人のためにホイッと投げ出したとしても、私は絶対に、その人には会えない。もっと言っちゃうと、私自身…

詩-153

君は死なない、君は死なない だから託した 夢を 笑顔を 可能性を託した君を心から愛すと言えば嘘になる、 けれど君を創り出し 育て上げたことに 虚栄はない 分銅ひとつ分すら インクひと壺分すら クッキー1枚分すら ないのだよ それどころか 花が咲いたのだ…

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日曜礼拝の朝。8時43分。21歳のレイチェル・ニールセンは教会の入口横の受付で、60代前半のシスターと話をしている。 『…そうなの、次の演習で【城の3つの喜劇】を歌うのだけど、シュタイエ城のイメージが浮かばなくて。それと劇中にちょっと出てくる教会…

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『Ikkę crię, mousier! 泣かんといてくださいな、旦那!』 『Sommetidles skaj dù crię, Sergei, 時には泣かんといかんときもあるのだよ、セルゲイ』 セルゲイは庭仕事の手を止めて、噴水脇の大理石のベンチに横たわるレイノルズ教授に目をやる。涙がつーっ…

詩-152 Edge Laneで僕は死んだ。

エッジ・レーンで僕は死んだ。 2013年1月の雹(ひょう)に叩かれて死んだ。 あるいは僕自身の目にも見えた僕の姿に嫌気が差して死んだ。それで僕は僕自身を離れて、飛んで消えていった。 ケンジントンのボロアパートの群れを、バスに揺られながら眺めていた…

詩-151 陸港

君は見たことがあるか 陸の港を 幾千、幾万もの道が流れる 陸の港を私は値打ちのない 汚れた旅人、 旅人だった 暗闇が 雨雲が友達で 言葉も笑顔も携えなくなった だから さあ 冬の光に 申し開きをする必要があるか 柔らかな百合の花束を 赤いリボンのような…

詩-150 across borders

初春に届いた あなたの言葉は 間違いではない 疑いこそしたけれど 21世紀に生きる私たちは オブラートの天蓋に覆われた スノードームの住民のよう 目に見えぬ災いが 私たちを苦しめ 締め上げ 不必要な求心力を与えて しぼませる それだからいまだに 景色は止…

詩-149 これが嘘でないなら

私は 天空を 仰がない 槍で 突っつくことも しない なぜなら 天空は 降りてくるから もしも 私の抱く この感じが もしも 上にあるものが どちらとも 嘘でないなら 私は創作者ではなく 登場人物だから 話の展開は 作者ひとりに任せて 下にいればいい もしも …

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「お義父さん、今、何と?」 マーティン・レイノルズの背中の筋肉がビキッとひきつる。硬いマホガニーの椅子に腰掛けたまま、動けない。 「ジュゼッペ。封蝋が欠け始めているから、作り直させなさいーーー今、私が言ったとおりだよ、レイノルズくん」 ヨハン…

死に色の夢+これからどう生きていけばよいのか

ここ1週間、心身ともにとても調子が悪い。 これを読んでくださる方にしてみたら、「そりゃ、飛躍し過ぎでしょう」と思われることだろうけども、自分、そもそもこの世に生まれてきてはいけなかったんじゃないかと。少なくともこの20数年間は、そんなことを毎…

詩-148 即興永久宣言

君の声がなくたって あなたの言葉が蔑んだって 誰が誰でなくなったってわたしは僕は ここにいる 近未来カプセルのなか 船室のような 孤独な書斎のなか わたしは僕は 大昔にそうであったように わたしとして僕として 本物で ここにいる。

詩-147

その木は言う、私に言う 千年経っても 見えるもの見えないもの 両方のすべてが見えると たとえ洪水で根こそぎ剥がされ 干ばつの日に身が裂けても 天に伸び 突き刺さって 諦めることなく すべてを見 すべてを感じると だから約束したまえと 木は言う、この私…

詩-146 赤い涙

私は流す 赤い涙を流す 血生臭い ただれたざくろのように 白い建物が倒壊した 煙と埃を上げて倒壊した 世界をパズルの始めに戻すかのように 数メートル先も見えぬ戦場で 太陽だけは痛くまぶしく輝く その銃口を私に向けてご覧、 たとえ片眼を失っても この景…

詩-145 図書館

やい そこの少年 キミは学校で習ったか 教室と校庭と 体育館の裏で習ったか 要領良く 有終の美を飾るには 要領悪く 行かにゃならんのよ だからキミたちもーーー 「へ、へ、へぇっくしょーーーん!」 競馬新聞読んでるおやじと 星占いに夢中なお姉さんの 白い…

詩-144 達磨と時間

達・磨 だ る ま ダルマ!!みたいに ボクは生きてる サテン地の みかん色した ふにゃけた座布団の上で 笑ってるんだか はたまた泣いているんだか とりあえず良くわからぬビー玉みたいな目ンコロふたつを回転させて 脚のない姿で 座っとるよ 目の前に 時間がい…

詩-143

詐欺で構わないのです、 あなたがくれる詐欺ならば 黄色い 金平糖のような星がたったひとつ、 それしかない最後の「黒夜」に シーツもろともずぶずぶ背中から沈み 白い布と羽根のつり革が部屋の天井から伸び 私を引き上げ 最後の笑顔を保管してくれるのなら …

詩-142 心象風景

心に 深奥に 蓮華草やら パンジーが咲く カミソリのように鋭い葉 あまがえるに 水滴、蒸気、光、雨粒 蓮の花 掘る えぐる 引き返して 引き下がって 奥、奥深くへ 姿が見えなくなるまで

詩-141 夏の景色

身代わりが早いのだ、わたしの恋は 短命なのだ、わたしのこの景色は 入れ替わり立ち替わり まるで地に足がつかないそうして そうやって置いていかれる なぜなら季節は夏だから なぜなら夏は 死期が早いから

詩-140

これをすべて 余すところなく 今いる人々の前で描写して 打ち明けられたら良いのに 何ともまあ 悲しい景色が 僕を生かすものだ あんな街灯や夜道は 思い出すものではない 2020年という時は あまりにも非現実 宇宙船すら見当たらないのに 君の顔を思い出した…