詩-60 恋慕

この世界では

目には見えない小さな不思議が

これといって頼んでもいない時と場所に

用意されている

アメーバのような形で生まれて

少しずつ少しずつ

心に浸み広がっていく

 

たぶんあなたとの出会いは

人生最大の不思議

私の頭のなかで絡まり

団子になった糸が

柔らかく解きほぐれていく

 

あなたが彼女を愛したようには

私はあなたを愛することはしない

彼があなたを見上げたようには

私はあなたを見上げることはできない

 

あなたの言葉に触れられなくなる

それを考えただけで

久方ぶりに私は叫んだ

『死にたくなんかない』と

 

だから 恋慕

これは 恋慕

ねえ 遠く遠くの 遠くのあなた

ちょっとだけ私に 自由をください

静かに穏やかに幸せに あなたを想う自由を

必要ならば 後ろの世界に背中をうずめて

あなたに寄り添い 微笑む自由を。