詩-64

あなたがあなたでないことを

喜ぶ人がいる

あなたがあなたにならないことを

願う人がいる

あなたがあなたになろうとしたときに

あなたを捨てたり叩いた人がいる

あなたがあなたでなかったことすら

認めない人がいる

 

誰からも愛されなかった あなた

いつも独りだった あなた

 

ドアはぐるりとあなたの周りに 

幾つだってあるのに

どれを開けていいのか わからない

意を決して開けようとすれば

外から海水が入ってきて

あなたを押し潰そうとする

 

悲しみのろうそくを

イコンの前に立て

虚ろな目で沈黙するだけの あなた

今夜はまるで なすすべがないような 

滞った空気のなかで

乳香を吸い込み その身にまとい

このまま闇夜のなか

くずおれて眠りにつければよいと

責め 祈り 痛み すすり泣く

 

誰の愛をも与えられず

嘲りにしか出会えなかった あなた

今はもう自由になって

消えなさい

頬に涙の跡を残したまま

奇跡を目指して 飛び立ちなさい。