詩-71 消えるたまご(3)

春は

最終章であり

序章でもある

 

ざらつきのない

光る殻

丸くて クリーム色で

小さくぽつんと まとまっている

 

たまごはふと少しだけ思い出した、

空を見上げて笑った日のことを

自分の行き先を憂うこともなく

ただ笑っていた日々のことを

 

たまごは願う、

雨上がりの青々とした芝生に身を潜めたなら

夜露と雨粒に体をこわばらせることなく

大の字に寝そべって 太陽を見たいと

春の陽射しのもと

すべてが消え 死に 終わり

つるりと殻が剥けるとき

たまごはやっと自由になって

頬に伝う涙を舐めて 信じ始める

自分が消える必要のないたまごであることを 

自分を少し責めながら 信じ始めるのだ

自分が消える必要のなかったたまごであることを。