詩-89

雨が降った日

私は必ずある地点に戻ります

あの人にも

この人にも 出会わずに済んだ

何も持たぬ私自身に戻ります

待ち構える未来も

憂鬱も

釘や棘の刺さった分厚い壁も

何ひとつ存在しなかった地点です

私は思い出すのです

あの 何も持たぬ私自身は

こんな雨音ひとつに心揺さぶられ

あのように多くのものを

胸一杯に秘めていたことを

 

誰も入ってこないということは

静かな 確かな 幸せ

 

そんな形で幸せだった私自身を

今の私は

スクリーンのなかに認めるだけです。