2020-01-29 詩-89 詩 雨が降った日 私は必ずある地点に戻ります あの人にも この人にも 出会わずに済んだ 何も持たぬ私自身に戻ります 待ち構える未来も 憂鬱も 釘や棘の刺さった分厚い壁も 何ひとつ存在しなかった地点です 私は思い出すのです あの 何も持たぬ私自身は こんな雨音ひとつに心揺さぶられ あのように多くのものを 胸一杯に秘めていたことを 誰も入ってこないということは 静かな 確かな 幸せ そんな形で幸せだった私自身を 今の私は スクリーンのなかに認めるだけです。