詩-96

さあこうして今、目の前に

1本の白い糸がございます。

 

細くてしっかりとした糸でございます。

 

これを何に用いるかは

めいめいの勝手なのですが、

 

わたしはあなたを知るための道具として

缶のなかから取り出した次第です。

 

さてこの白い糸、

扱うには多少『こつ』がいりまして、

 

あなたにお近づきになるときは

長く繰り出す必要がございます。

 

逆に逃げようとする場合には

指で巻き返して短くしなければなりません。

 

あなたに飽きた日には

勇気を出して

真ん中でちょん切る必要があるでしょう、

幸いわたしは今のところ

そのためにハサミを使うつもりはございません。

 

おおかたの人は

縫い仕事が好きでしょう。

自分の求める地図を作ろうとして

この糸を使うことでしょう。

 

わたしはこの糸そのものが好きですし

自分の求める地図というのもありません。

 

世間の皆さまから見たら

さぞかし退屈極まりない者でしょうが、

ただあなたと関わりたい一心で

この白い糸を毎日指に絡ませて遊んでいるのです。

 

ですのでそこのところ

あなたに微笑ましく思っていただければ

私としてはまあまあ安心でございます。