詩-98 悪夢

突如嵐が やって来た

川は水かさを増し 

その激しい流れが

巨大な海豚や水牛までもを 飲み込んだ

雨風は気まぐれに向きを変え

左、右、右、左と 水面を殴りつける

地上に停められた車がひっくり返るのを

私は見た

そして

爆発音とともに 景色が変わり

この世界の辺り一面が

雪景色となったのを 見た

 

私は今 鷲にでもなったかのように

ひとり上空を舞い

人っ子ひとり見えない 

この軍用基地のような場を見つめている

雪と氷は溶けることがなく

人が頼みにしたであろう作物を覆い尽くし

ユキヒョウや虎だけが生き残り

凍土を踏みしめて歩いていく

 

そして私は不思議なことに

この上空から

雪に埋まった大きなざくろの実を見つけた

私はまばゆいほどのその実目がけて

急降下し 

嘴で突き刺し

数十年振りかとも思われる 甘味を吸った

ざくろと同じように輝く勝利の涙を

ぽたぽた ぼろぼろ 流しながら

 

これは終わりかただのやり直しか、

今の私には答えられない

いつか雪が溶け 

夏の熱に大地が干上がり

割れた地面から芽が出たときには

ただその芽に話しかけて

辛抱強く待つだけだろう

姿形を失った人々が再びいつ戻るかは

祈るしかないことなのだ

私の力及ばぬ事柄それ自体が

みみずさながらに蠢き出すことを

待つよりほかはないのである。