詩-129 河馬

泥水に手足を浸せば

爪に砂土が入る

わたしはこの大地にも似た赤色の汗を 

ぷつぷつと毛穴から発して

何事もないかのようにただ前を向き

一対の豆球さながらに

目をせわしなく阿呆のように動かしている

太陽は幼児の描いたような

ただ金一色の馬鹿正直さで

一周、また一周と仕事にいそしむ

肉のたるんだわたしの前足、

腫れた腹、

四つん這いにて草に泥に土に石ころに

信号を送っては頼みごとをし、

泥水に溺れ死んだタンポポを拾い食いしては

何度も何度もその茎を噛みしだく

わたしの体は 鉄のように重たいけれども

地球も天の神も水辺のサギも

まだまだわたしを一人前とはみなしてくれぬ、

勇ましくびちゃんびちゃんと 

ぬかるみを叩いてみても

しぶきはわたしに跳ね返るのみ、

わたしは全くもってどっしりしない

そわそわ、あわわと動揺ばかりの河馬

葦も

夏の太陽も

ハイエナのだらしなく開いた口も蜃気楼も

まだまだわたしには訪れない、

まだまだこれは 映写機のたわむれだ。