コートを羽織り
しゃがんで革靴の紐を結び
帽子をぐいと被り
立ち上がったならば戸を開ける
見上げた青と白とのマーブル模様が
じわりと目にしみる、
まるで指先でくゆらせた
葉巻の煙のように
見えないこと見せぬこと
消えること消せることを
私に許可してほしい
ざらついた地面に落ちた薄い人影が
その所有者を失い 切り離され
やがてこのマーブル模様に向かって舞い散るみたいに
静かであるとは良いことだ
いないというのも良いことだ
今日も明日も旅支度を繰り返し整える
私は
歩くと同時に足跡を消して
私からもあなた方からも遠く離れて
自由に穏やかに消え去りたい。