tête-à-tête 3

「私、マーティン・フラン・レイノルズは」

『私、マーティン・フラン・レイノルズは』

「ホワイト・ヘイヴン永住者として」

『ホワイト・ヘイヴン永住者として』

「病めるときも健やかなるときも」

『病めるときも健やかなるときも』

「幸福なるときも失意に惑うときも」

『幸福なるときも失意に惑うときも』

「この地の法に従い」

『この地の法に従い』

「あらゆる努力を放棄し」

『あらゆる努力を放棄し』

「財布の紐を緩めるが如く」

『財布の紐を緩めるが如く』

「のんべんだらりと楽して生きることを」

『のんべんだらりと楽して生きることを』

「誓います」

『誓います』

 

「それでは、こちらの書類に署名を」

『了解です』

「……はい、ありがとうございます。確認いたしました。これで無事、宣誓式はおしまいです、お疲れ様でした」

『ありがとうございます。お手数おかけしました』

「いえいえ。それでは、永住許可証の交付となりますので、どうぞこちらのテーブルへ。ご希望の色は水色で間違いありませんでしょうか?」

『はい、間違いありません』

「ありがとうございます。次に交付番号ですが、こちらの番号はレイノルズ様の場合、入国審査当日の日付となっておりますが、よろしいでしょうか?」

『はい、これも間違いありません』

「ありがとうございます。ちなみに交付番号は、ホワイト・ヘイヴンにお住まいである限り、永年使用となります。そして、まあ、これはレアなケースではありますが、万が一他国へ移住なさる場合は、当然、許可証もこの番号も放棄・返還していただくことになります」

『そういうレアなケースというのは、今までにありましたか』

「私が知る限り、この10数年間で7件ほど。その方々は皆さん一様に、のんべんだらりと楽して生きることがどうにも無理だったようで、性に合わん蕁麻疹ができるわいとおっしゃって隣国へ再就職しに行かれました」

社畜の道を再度選ばれた、と』

「そういうことになりますね」

『なるほど。奇特な方もいらっしゃるんだ。ある意味、賢明かもね』

「おっしゃるとおりです。私どもも、止めはいたしません。楽して生きることを誓うのも決して楽ではありませんから、まあ、そのようにしてお逃げになるのも一案かとは思います」

『同感です。ところで、ひとつお伺いしても?』

「はい、何でしょう?」

『この役場の近くに、砂糖専門店はないかな』

「砂糖ですか。どのような用途で」

『うん。珈琲に入れる角砂糖をね、まとめ買いしたい。1杯飲むのに8つは必要だね』

「専門店…とは言えないかもしれませんが、役場目の前の通り、ストランドa通りを右に真っ直ぐ行かれると、雑穀やお茶、甘味料などを扱う小さなお店があります。コーヒーカップのような目印が店先に出ているはずです」

『なるほど、ありがとう。これから行ってみるよ、まだまだ知らないことばかりだしね、この街については』