tête-à-tête 4

『いいかね、くれぐれも勘違いしないよう、口を酸っぱくして言っておくが。君らはあくまでもこちら側だ、言うなれば君らは全員、無条件に、側近だ』

18世紀前半。場所はヴィレホウリウ王国の国王宮殿3階の『冬歩兵の間』。国民教育部長のヴィルヘルム・ゾンダースは、軍隊さながらに並ばされた大学生と若手研究者数十名の列のあいだを、後ろ手を組み青年一人ひとりに監視の目を入れながら歩いていく。ゾンダースはとある学生の前で立ち止まると、学生の曲がったネクタイに手を伸ばし、キュッと締め直して学生の右肩をポンと叩く。学生はゾンダースと目を合わせることなく深く一礼をする。ゾンダースは総勢5列に並ぶ青年集団の先頭に戻ると、胸を張って中央に立ち、左から右、右から左へと列の全体を見渡した。

『このような機会に恵まれたこと、選抜されたことに、まずは感謝したまえ。なぜなら君たちは国王の威厳を国じゅうに宣べ伝える使者として、一目置かれる存在になるからだ。君たちの役目はただひとつ、国民の頭脳を管理・統率することだ。これを【啓蒙】と呼ばずして、何と言う?』

左端最前列に並ぶ学生ふたりが互いに耳打ちし合うのを見て、ゾンダースは素早くふたりを叱責する。

『そこのふたり。疑問点があるのならコソコソと話すのはやめて、堂々と挙手をしなさい』

すると学生のひとりが、ソバカスだらけの顔を赤らめて挙手をした。

『すみません、あの、質問なんですが』

『何だね』

『どうなんでしょうか、あのその、報酬と言うか、月額収入というのは』

『気になるかね』

『ええ、まあ…』

ゾンダースは左胸につけた金のメダルとリボンを整えながら、学生の質問に回答する。

『心配はご無用だ。君ら一人ひとり平等に毎月定額支給する。具体的には1,360シクレほどになるだろう』

青年たちはその額に一斉にざわつき、列の真ん中からはどよめき声が上がる。ゾンダースはしたり顔で話を続けた。

『そうだ。食うには全く困らない額だろう?だから私は言ったのだ、これほどに祝福された務めもないだろうと。だからこそ君たちには、国の方針に従わない学内の同僚・上司についてはひとり残らず密告してもらう義務がある。そして報酬に見合うだけの仕事をしないのならば、君たち自身の立場も危うくなると、今の今から認識しておいてくれたまえ。いいね?』