tête-à-tête 8

『わざわざここで嘘をつくのはやめなさい。君と一緒にいたと言う女の子が、つい先ほどこの場所に駆け込んできて、君が殺すのを見たとわめいたんだ』

『すみません。嘘をつきました。殺したのは蛙じゃなく、ウサギの子3匹です』

1863年、ビレホウル王国の首都、スキャルケイル。ヤンセン孤児院の院長カール・ヤンセンは、自分の目の前で表情ひとつ変えず白状する少年の姿を、信じがたいといった様子で凝視した。少年は続けて答える。

『そばに大きい石があったから、それで叩きつけました。頭を殴って割りました、全部。それから足で踏み潰しました』

少年は無表情のまま、泥とウサギの血のついたブーツの側面を、ヤンセン院長に見せようとする。院長は口もとを片手で押さえ、もう片方の手で少年を追い払うような仕草をする。少年は微動だにせず、院長の前に立っている。院長は顔をひきつらせながら少年にたずねた。

『いったいどうして、そういうことをするのかね』

少年はその質問がまるで愚問であるかのように、肩をすくめて答える。

『ただそこにいたからです。石も落ちてたし』

『君と一緒だった女の子は、金切り声を上げてここにやって来たんだぞ。その子は君がそうやってウサギを殺す瞬間を、たまたま見たのか?それとも』

『ああそれなら、殺したあとに来たの。たまたま森にやってきて、通りかかった、それでそのあとすぐ、逃げてった』

少年は左肩をボリボリと掻きながら平然と答える。ヤンセン院長は唖然として、大きな溜め息をつく。そして院長室の窓際の机に向かい、引き出しから細い革の鞭を取り出すと、再び大きな溜め息をついた。

『いったい何度同じことを私にさせれば気が済むのかね……さあ、両手を出しなさい』

少年は黙って両手のひらを前に出す。ヤンセン院長は鞭を振り上げ、ピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシッと少年の手を叩いた。少年は叩かれた手のひらをしばらくのあいだ眺めていたが、その後静かに院長に言った。

『これで終わりですか』

ヤンセン院長は右手に持った鞭をズボンのポケットに押し込むと、机に戻り、背もたれのついた椅子に身を投げる。そして諦めの境地で少年に答えた。

『……あとはいつもどおり、地下の部屋へ行って、そこで一日反省していなさい。さあ、もう出て行きなさい』

少年はわかったというふうに軽くうなずくと、ポリポリ尻を掻きながら院長室のドアへ向かい、そのまま黙って部屋を出て行った。

ヤンセン院長は両手で顔を覆い再び溜め息をつくと、机の上の資料を横目で見やる。

 

《シリル・ジョン・レイノルズ

1854年3月18日生まれ

実家はスキャルケイル市内にあったが、父親が精神病院に入院したのち、母親も養育を拒否

ひとりっ子

2歳頃より父親から身体的虐待を受けていた模様、3歳で入所(1857年9月2日)

全体的に栄養状態不良

時として暴力行為に出るため、要注意・要観察の対象とする》