tête-à-tête 12

フラン、ジョン。ふたりともいいか。お前たちはそれぞれ、双頭の鷲になりなさい。彼らに対しても自分自身に対しても嘘を仕掛ける、東西の双頭の鷲となりなさい。

嘘をつくのは善いことだ、最後の最後で笑いたければ。最後の最後、お前たちが各自めいめいのゴールテープを切って、それまで歩んできた道のもっともっと先へと突き抜けたければ、嘘はお前たちふたりにとって最も価値ある道具となるだろう。だから勇気と自信を持って、嘘をつきなさい。嘘を貫き通しなさい。

裏をかいて、笑ってUターンするんだ。刀も、手榴弾も、懐の奥の奥に隠しておきなさい。今、抗うことより大切なのは、きちんと目を見開いて、見るべきものを見ておくことだ。景色を、歴史を、お前たちの目に焼き付けておくことだ。

奪われるふりをして奪いなさい。何もかも鵜呑みであるような素振りで、相手を振り切りなさい。

笑うことを決して忘れてはいけない。ただし、見せる相手とタイミングを間違ってもいけない。笑いの種類の使い分けも重要だ。そして本当の笑いは、自分のために最後まで残しておきなさい。

もう一度言う。奪われるふりをして奪いなさい。実際に奪われるときもあるだろう、それを決して負けとは思わないことだ、お前たちの懐から奪われるものは、一時的な喪失に過ぎない。最後には十倍にも二十倍にもなって、お前たちのもとに戻ってくるだろう。

ふり、というのはお前たちを守り、助けてくれる。こうイメージしてみなさい、お前たちの周りには様々な色をした薄い皮のような、あるいは膜のようなものが張られていてーーーー

 

『ウッ、ウォォォォッ』

ジョン・レイノルズはベッドの下から反射的にブリキのバケツを引きずり出して、勢いよくそのなかに嘔吐する。何度も咳込みえずき、脂汗のにじむ額には前髪がへばりつき、動悸で両耳は熱くなってジンジンと耳鳴りがし、ふくらはぎまでしびれてくる。喉に手を当ててやっとの思いで呼吸と気分を落ち着かせると、ジョンは最後の唾を吐ききって床にへたり込んだ。

 

荒い呼吸の波に再び襲われそうになりながら、ジョンは壁に立てかけられた1枚のキャンバスに目の焦点を合わせ、四つ足で這いつくばって壁に近づいていった。そしてキャンバスの上に重ね塗りされた油絵の具を、震える指先で撫で、ただひとり、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

『俺は、ゴールを切ったんだ、ちゃんと、切ったんだ、だのに、ゴールテープの野郎、あいつはまるでトランポリンみたいに、ゴムみたいに、俺をうまくはじき返しやがった、だから俺は、ちゃんとゴールを切ったのに、ゴールできなかったんだ、俺の胃袋も、目も、足も、全部破裂して、根こそぎ取られて、ねじり、もぎ取られて、それで俺は俺のまんまで失敗して、切れて、燃えちまったんだ』

ジョンは脂汗の浮いた鼻頭を指で拭うと、体を震わせながら泣き出した。そしてぼさぼさの黒髪を振り乱し、体を丸め、両手で頭を覆い隠すような姿勢のまま、しばらくのあいだ壁の前を離れることができなかった。