tête-à-tête 13

1871年、ビレホウル王国、首都スキャルケイル市内のフラン・レイノルズ宅。4階の自室からマーティンが降りてきて、2階の応接間にいる父フランに報告をする。

『お父さん、僕、無事に王立大学の入試に合格しました』

『そうか。驚きはしない。お前なら受かって当然だ』

フランは窓際近くにある、書類や装飾品などが収められた背の高い棚のなかから、クリーム色がかった封筒をひとつ取り出してマーティンに手渡す。

『合格したからといって、今ここで気を緩めないように。お前は学者になるのだから、本当に大変なのはこれからだ。だからこれで教科書なり文献なり買って、今まで以上に勉学に励みなさいーーーそのためのお金なら、父さん、幾らでも出すぞ』

マーティンが封筒の口を開けると、中には分厚い札束が収められていた。

『ありがとうございます、お父さん。大切に使わせてもらいます』

マーティンは礼を言うと、静かに自分の部屋へ戻っていった。父親のフランも、ライティングデスクの上の読みかけの新聞に手を伸ばし、何事もなかったかのように新聞記事に目を通す。

 

 

1871年、ビレホウル王国、首都スキャルケイルから北に数キロ行ったところにある、森林公園。閉園前の静まり返った晩秋の森の奥深く、ひとりの10代の青年が、1本の大木にくくりつけた標的めがけて、銃弾を撃ち込む。

《ママ、ママ、ママー》

《おいそのガキ黙らせろや!》

一発。

《うるせえって言ってんだろ!》

一発。

《あなた、シリルはまだ2歳なのよ、言うこと聞くわけ……》

《お前も誰のおかげでメシが食えると思ってんだよこのクソ女!》

《ちょっとやめてください!》

一発。

《ママ、ママ、マ……ギャッ!!》

《てめえは口閉じてろ!!》

一発。一発。さらにもう一発。

《ジョン!やめて子どもに何する……》

《うるせえって言ってるだろうがっ!!》

青年はもう一発銃弾を標的に撃ち込むと、ブーツで地面の土を蹴り上げる。えぐれた地面の下からは、名前もわからない草花の根と葉が顔を覗かせた。

青年は木にくくりつけた人型の標的を外すなり、足で踏みつけ、蹴飛ばし、マッチをすって火を着ける。小さな炎が徐々に徐々にと人型に広がり、やがて地面の木の葉にも燃え移って、大きな赤い舌となって伸び広がっていく。青年は薬莢を捨てると、銃を袋にしまい、そのまま踵を返して森を出て行った。