tête-à-tête 21

1900年、ホワイト・ヘイヴン市内。シリルとマーカスが同居している一軒家。シリルが2階の自分の部屋から降りてくる。

『なあマーカス、おまえ今晩はどこの酒場に行きたい?マーカス?』

がらくた置き場に使っている1階の空き部屋を覗いてみたが、そこにはマーカスはいない。シリルは台所兼食堂の小さな部屋に向かってみた。

『ああここにいたかマー…』

部屋の入り口でシリルの足が止まる。彼の目の前には白いドレス姿の若い女性が立っていた。女性は天井から吊された小さなシャンデリアの真下に立ち、その手には細い縄を持って、振り向くと虚ろな目でシリルのほうを見る。

『リディア』

シリルは右手を差し出しながら、ゆっくりと慎重に女性のほうへと歩いていく。そして威厳のある声で、もう一度女性に声をかけた。

『リディア、やめなさい』

女性はシリルに近づくと、ドレスの肩をはだけ、詰問するかのように言った。

『近親相姦って、あるでしょ。それって、あたしの責任なの』

シリルは女性の目をしっかりと見て、ゆっくりと明瞭な声で答えた。

『違うよ。お前は、そうさせられたんだ』

女性はシリルににじり寄る。

『あたしって、娼婦なのよね?』

『違う』

『だって、汚れた女なんでしょう?』

『違うよ』

『あなただったら、あたしにいくら値段をつける?3ダレル?8ダレル?』

シリルは女性のはだけたドレスを静かに整え、テーブルにあった麻のタオルで彼女の両肩をくるんで抱きしめると、もう一度しっかりと目を見て言った。

『お前は、俺の、女だ。お前に、値段は、つけない、つけられない、つけさせない』

『どこにいるのか、私にはわからない』

女性はシリルに抱きつくと、彼の肩越しにそうつぶやく。シリルは女性の赤茶色の巻き髪に顔をうずめて言った。

『リディア。お前がマーカスであろうと、誰であろうと、俺はお前を愛してる。愛しているんだよ。もう何があってもお前を離さない。だからもう二度と、二度とあのときみたいに、消えてくれるな。繰り返しはもう、御免なんだよ』