tête-à-tête 22

『えっ。僕のいとこってことですか?』

『そういうことだね』

マーティンは口まで持っていったコーヒーカップをソーサーに戻して、黙りこくった。ヨハンネスは同情心からマーティンの手を握る。

『でも僕、そのおじがいるってことも、知らなかったです』

『どうやらその人は精神に異常をきたしてしまい、病院へ送られたらしいんだ』

『精神病院……ということ?』

『そういうことになるね』

外からは小鳥のさえずりしか聞こえてこない静まり返った空気のなかで、マーティンとヨハンネスはただ向かい合って座っている。居心地の悪い沈黙が数秒間、続いた。ヨハンネスは憶測で話を続ける。

『私が思うに、……そう、あくまでも私見なんだが、君のお父さんやそのほかの身内の方々は、その人はもういないものとして隠したかったんじゃないかと』

マーティンは焦点の定まらないまま、カップのなかの紅茶を見つめている。ヨハンネスは謝罪する。

『勝手な解釈で申し訳ない。あくまでも私個人の考えだから、事実とは受け取らないでくれ。お父さんから話を聞けたら、それがいちばんなんだろうけども、お父さんとは会っているかい』

『いえ』

『気に障ったね、いや、申し訳ない』

『いえ。ご存じのとおり、疎遠なもので』

『もうだいぶ長いあいだ、かね』

ヨハンネスは優しくマーティンにたずねる。マーティンは小さく自嘲気味に笑った。

『はい。大学に通い始めてからは、ほとんどもうずっと』

『まだあちらの国に?』

『だと思う……、先に僕がこちらに来てしまったんだろうと思います、元気にしているかあるいは病気か、僕にはもう、わかりません』

ヨハンネスは長く息を吐いて、マーティンの手を握った。マーティンもヨハンネスの手を握り返して、寂しげに笑う。

『……とりあえず、そのいとこという人に会えたらいいんだけどな』

『その人ももうこっちに来ているといいんだがね』

『どうでしょう……、それにはまだ若すぎるかなとも思うし。ほら、あの、僕みたいなのはちょっとばかり例外的でしょう、事故だったから』

『事故?』

『……ああ、スミマセン、ご存じないですよね。落馬です。落馬して頭を打って』

『ああ……そうだったか……』

マーティンも同じように大きなため息をついて、両手で顔を覆った。せっかくヨハンネスと一緒に飲んでいた紅茶が冷め切ってしまったことにも、もはや気が回らなかった。しばらくして顔を上げると、マーティンは真っ直ぐとヨハンネスを見て言った。

『なんとかしようと思います。やっぱり、その人と会って話したいです、僕』

『私にできることがあれば、力になるよ』

『……ありがとうございます。僕はヨハンネスさんのような人がいれば、実の父は、もういいです。レイノルズ家ってのは、……幸せじゃない、ちっとも幸せなんかじゃ、ない』