tête-à-tête 24

俺は自問する。そうだ、自問の時間だ。あのクソ忌ま忌ましい時間が、例によって今またこうして始まる。太鼓腹の時計が偉そうな顔してくるりと向きを変えて、『おいお前、いつものあれをやれ』とガチャガチャ短針長針振って言ってきやがるんだ。お前こそおととい来やがれだこのクソ野郎。

……仕方ねえ。それじゃあ、始める。まず俺様は、……この俺様に限って、見誤ったのか?見当違い、見込み違いは俺のほうなのか?

あの日、あいつの目を見ることができなかった、曇っていたからな。よし、まずはそこを言い訳にしよう。ただ見えなかった。見ようとしなかったとか、見るのが怖かったとか、そういうことではなかったとしよう。

ただし雰囲気はつかめたはずだ。そう、膜だ、オーラだ。だのに俺は、欲しいだけのものすべては感じ取れなかった。ぼんやりし過ぎていたのは、蟹だ、蟹のせいにしよう。それに目の前に自分の女がいながら、完全に、完全に女を無視して、全神経を集中させてあの男を注視するなんてことは、俺には無理だ。

……いや、何を言い訳してる。

お前は。一瞬。調子に。乗った。それだから、逃げた、つかみ損ねた。勝ったと思ったのに。見つけたと思ったのに。本当にあの勝利の感覚が本物だったのかすら、萎みかかってしまってわからない。

あいつは誰だ。いったい誰だ。なんでああも『まとも』に見える。なんで俺が予想する以上に、うまくこぢんまりとまとまってておとなしくて、小綺麗なんだ。心んなかで、本当は何をしてる。できることなら、それだからこそ、引きずりおろしたい。その甲斐があるはずだ。引きずりおろして、引っ張り込んで、俺の側についてくれと誘って、俺と傷の舐め合いをしてくれと懇願して、あいつの傷を俺がもっともっとねじって、つねって、押して、その傷口に【更なるショック、更なる失望】ってな名前の塩でも塗り込んで、それであいつをぺしゃんこに潰して、水でもかけて、溶かしてやりたい。死ねばいいんだ。

『そこのお前。幸せになるな。俺を差し置いて、幸せなんてものを食い散らかすんじゃねえ。俺と。俺と一緒に。壊せ。殺せ。憎め。変わるな。誰かを、何かを、えぐり殺してやれ。なぜ俺ひとりがーーー』

『おお妖魔!』

あ?なんだ?誰だ?

『おい妖魔!』

俺に向かって言ってんのか?……あ?なんだあのデブ親父。

『おいってば妖魔!あっれー、人違いかあ?妖魔!』

うぜえ。逃げるに限る。この角、曲がれ。

『おーーーい……【都市の愛人】なら新品が入ったぞ、俺が許可するから読め…………』

ああもう、邪魔すんなクソジジイ!