tête-à-tête 30

シリルとリディア、マーカスの家。パジャマ姿の男の子が、シリルのベッドの上で飛び跳ねたり転がったりを繰り返して遊んでいる。シリルは自分のパジャマを着て跳ね回るその子を見て笑う。

『おいおいマーク、そんなに飛び跳ねたら天井のランプにアタマぶつけるぜ』

シリルは少年に向かって手を伸ばす。男の子はキャッキャッとはしゃぎ続ける。

『あのね、僕ね、サンドイッチが好き』

『どんなサンドイッチ』

『えっとね、ハム!ハムと菜っ葉がね、1枚だけのやつ』

『随分と質素な奴だなお前も』

『しっそって何?』

マークという名の少年はくるくる回りながら、トランポリンの上にでもいるかのように遊ぶ。

『少しでもいいってことだろ、きっと。それよりお前、パジャマの裾踏んで転ぶなよ、危なっかしい』

『シリルお兄ちゃんはサンドイッチ好き?』

『まあ好きでも嫌いでもないわな』

『あんずとバターのジャムサンドとハムサンド、どっちが好き?』

『それならカツサンド食わせろ』

『違うの!ジャムサンドとハムサンドのどっちかひとつ!』

『仕方ねえな。じゃあお前と同じハム……』

『あっ!』

マークはパジャマの裾を踏みつけてつまずくと、シリルのいるほうへと勢いよくつんのめる。シリルは慌ててしがみついてきたマークを首尾良く抱きとめ、ベッドから降ろす。シリルは笑って少年をたしなめた。

『だーから言わんこっちゃない。パジャマ着て遊ぶんなら、自分のパジャマにしなさい。俺のじゃだふだぶなんだから』

マークはシリルに抱きついておんぶをせがむ。

『えーだってあのパジャマ、僕のパジャマじゃないんだもん。僕はピンクとか赤なんて、嫌い!ダメ!あとおんぶがヤなら一緒に踊って踊って!』

『はいはいわかりました』

シリルはマークの両手を握る。マークはワルツやチークダンスの真似事をして、またキャッキャッとはしゃぎだす。マークはシリルの胸元に顔を近づけると、シャツのにおいをかいだ。

『お兄ちゃん、いっつもタバコのにおいがする。ダメだよそんなの吸っちゃ。タバコは不良の始まりだよ!』