tête-à-tête 40

ホワイト・ヘイヴン、ブレウ海。雲ひとつない快晴、月曜昼の2時。誰もいない砂浜で、シリルとひとりの女の子が遊んでいる。女の子はシリルの隣にぴったりとくっつき、しゃがみ込んで砂の上に小枝でヒトデの絵を描いている。

『それは何?星?』

シリルは女の子の顔を覗き込み、親しみを込めてたずねる。すると女の子は満面の笑みで答えた。

『これはねえ、ひとでって言うんだよお』

女の子は小枝の先でstjęjnephiske(ヒトデ)と書いた。シリルはそれを見て女の子を褒める。

『すごいな、綴りもよく知ってる』

女の子はにこにこしながら砂浜に絵や文字を描き続ける。

『お兄ちゃんはひとで、見たことある?』

『そういえば、ない』

『えーっ、ないのお?ひとで、ほんとに知らないのお?ハンナはねーえ、海の近くに住んでたから、なーんだって見てるし、なーんでも知ってるんだから!』

女の子はシリルの腕に自分の腕を絡ませ、キラキラ目を輝かせてシリルに微笑みかける。シリルも女の子に微笑み返すと、彼女の頭を優しく撫でた。女の子はにんまりとしてシリルに抱きつく。

『ひとではねえ、お水のなかでねえ、きらきらぴかぴかしながらダンスするの。お魚も周りにいるんだよ。カニもいるの』

カニってうまいよな。今度また一緒に食うか』

女の子はふくれっ面をしてみせる。

『もう、お兄ちゃんは食べることばっかり!カニは海のなかで泳ぐの!こうやって泳ぐの!』

そう叫ぶと女の子は立ち上がって、両腕を盛んに動かしながらシリルの周りを飛び跳ね、ぐるり1周した。

『ハンナは海のことならなーんでも知ってるんだから!ハンナはねえ、海のそばのおうちに住んでいて、お父さんとおか……』

そう言いかけると、女の子は突然顔を歪ませ、やがてその目からはじわじわと涙が溢れ出る。まるで転んだときの膝小僧の傷が徐々にジンジン痛みを増してくるように、小さなむせび泣きがやがて大きな嗚咽に変わった。

シリルは何も言わずに女の子を抱き寄せ、背中をさする。女の子は全身を震わせ、しゃくり上げ咳込み、シリルにしがみつく。

『嫌だったな、怖かったな。もう大丈夫だぞ、俺がいるからな』

『お兄ちゃん、お兄ちゃん』

シリルの言葉を聞くと、女の子は男のシリルですら苦しいと感じるほどに激しく彼の胸にしがみつき、何度も何度も叫び声を上げて泣きじゃくった。