tête-à-tête 41

1884年、ビレホウル王国、首都スキャルケイル。シリルの自宅キッチン。とある精神病院の女性看護師が訪問に来ている。ふたりは小さなテーブルを挟んで、向かい合って座っている。

『だからそれは俺には何の関係もないことだってなんべんも言ってるじゃねえかよ、』

シリルは憎々しげに吐き捨てた。

『そもそもなんで俺が会いに行かなくちゃならないんだよ?それは俺の仕事、いや、誰の仕事でもねえだろうが』

『うん、それはわかるんだけど、あなたの気持ちはじゅうぶんわかるんだけどもね、あなたの名前が出たから』

『俺に会いたいって本人がはっきり口に出して言ったのかよ』

看護師は決まり悪そうにモゴモゴと答えた。

『いえ、あの、ただ名前を発しただけなんだけどもね、』

『それじゃ本人の意志が確認できたってことにはならないだろうが。幻覚でも見てたのかもしれないし』

シリルは吸いかけの煙草を灰皿の上で押し潰し、腕を組み脚を組んで冷たい視線を送る。看護師はおどおどと説明を試みる。

『そういうこともあったかもしれない。ただ私たちとしてはね、その、あなたのお父さんももう60近いし…』

『俺の親とか言うなよ、』

シリルはぴしゃりとはねのけた。

『60だろうが70だろうが関係ねえじゃねーかよ。なあ、お前ら忘れてないか?俺は、お、れ、は、被害者なんだよひ、が、い、しゃ!その俺が奴を救うようなことをして何になる?そういうことをお前らはこの俺にさせる気か?いったいなんべん人の傷口に塩を塗れば気が済むんだよ?お前ら加害者側に回りたいってか?』

看護師は小さく縮こまってうつむく。シリルはたたみかけるように言った。

『それにな。俺には自分自身の家族なんてもの以上に守りたい人がいるんだよ。だからこんな茶番にアタマ突っ込んで、お涙頂戴の親子再会、和解劇を演じる時間なんてない。そもそも俺は、あいつからも母親からも、今まで一度たりとも何の謝罪の言葉ひとつ受けてない。誰からも、何にも、な、ん、に、ももらっちゃいないんだよ!』

シリルは最後の言葉を、テーブルに指を突き刺しながら叫んだ。この日いちばんの乱暴なもの言いだった。女性看護師は小さな声で遠慮がちにたずねた。

『リディアさんは最近、どう?』

シリルは看護師を睨みつけて玄関ドアを指差した。

『お前らには関係のないことだ。俺とお前らのあいだには、何の関係もない。帰れ。帰ってくれ。あの男がますますおかしくなろうとどんな病気で死のうと、俺には何の関係もない。もう二度とここには来るな。二度とこんなふうに俺のことを追いかけ回すな!』