tête-à-tête 51

ホワイト・ヘイヴン市内、マーティンの自宅近くの空き地。1900年12月30日。昼の1時。

マーティンは顔馴染みになったシトルリアの喫茶店の店主から依頼を受け、週に1、2度、彼の息子やその友達の面倒を見るようになった。それで今日はその子どもたちと、この空き地で凧揚げをしている。

『ねえおじさーん、こっちのタコも見てよう』 

マーティンから4、5メートル離れたところで大きな凧を操ろうとしている、7~8歳の男の子が声をあげた。マーティンは一緒に凧上げしていた少し年上の男の子に糸を預けて任せると、助けを求めるちびっ子のほうへと歩いていく。

『お兄さんと呼びなさいお兄さんと』

『えーだっておじさん、【おじさん】じゃーん』

『心は大学に入学したての10代だよ』

『大学って何?何するところぉ?』

男の子は足もとをふらつかせながら、首を限界まで伸ばして上空の凧を見つめている。その子は多少小太りで、薄緑色のダッフルコートをフードを被って着ているせいか、後ろから見るとマーティンにはまるで亀のように見えた。マーティンは男の子と一緒に糸を握り、同じように首を伸ばして空を見上げると、男の子の質問に回答した。

『大学ってのはねえ、えいやっ、つまんない文章を書いたり読んだりして、ボクが正しいんだ、いやワタシが正しいだって、これまたつまんないケンカをするとこー』

男の子は寒さで青っぱなを垂らしながら更に質問をする。

『ふーん。でも、おじさんは、はかせなんだよねー?』

『そうだよ。お兄さんは博士なんだよう、お兄さんはねー』

『そんなにつまんないところなのに、なんでおじさん、はかせになんかなったのおー?』

『さあ、なんでなんだろうねー、お兄さんにもわかんないねーお兄さんにも』

『きっとそういう道が当然だと思わされてたんだろ、そういうのが』

少し離れたところから男性の声がした。マーティンは上空の凧から声のするほうへと目をやる。するとそこにはオリーブ色のミリタリーコートに赤のスカーフ、小銃モチーフのブローチを左胸に着けたシリルの姿があった。マーティンの手から凧の糸がすり抜け、男の子はまたひとりで重たい凧を操縦しなければならなくなった。

『おじさん!おじさんてば!』

マーティンは男の子に大声で2度呼ばれてようやくハッとし、謝った。

『ごめん。ちょっとこのお兄さんと話をしなくちゃいけないんだ。ひとりで飛ばせる?』

シリルはコートの内ポケットから煙草とマッチを取り出すと、煙草に火を着け、いつものように指先でくゆらせる。そして無関心を装うふりなのか、抑揚のない乾いた声で言った。

『たまたま通りかかっただけだ。込み入った話は別に今じゃなくてもいい。それにしても、偶然ってもんは一度起きると続くもんだな』

マーティンは握手をしようと、急いで右手を差し出す。シリルはそれには応じずに、持っていた小さなウイスキーの瓶をマーティンに差し出した。

『ほれ。寒いときには飲むのがいちばんだぜ。お前は見るからに下戸っぽいから、敢えてここでひとつ、修練しないとな』