tête-à-tête 55

ビレホウル王国の首都、スキャルケイル。1872年、春。シリル・ジョン・レイノルズのいる孤児院。1階にある、孤児たちのための連絡室と主調理室がつながるエリア。この連絡室で孤児たちは奉仕活動の当番内容を確認することになっている。この日もシリルはいつもどおり不承不承ながら、2階の自分の部屋から降りてきて、今日以降の活動内容をチェックしていた。

2階のいちばん奥まった部屋には副調理室があって、子どもたちは随時自由におやつを取って部屋に持ち帰ることができた。1階の主調理室は子どもたちと職員全員分の食事を賄う場所で、シリルが訪れたときも湯気やスープの香りが連絡室の半分にまで立ち込め、調理器具のぶつかり合う音が響き、忙しく働く調理師たちの声が聞こえてきた。

シリルは副調理室で見つけてきたビスケットを1枚口にくわえ、連絡室の隅にある机へと向かう。そこは記帳台のようになっていて、奉仕活動のリストと鉛筆が数本置いてあり、各自子どもたちが自分の仕事内容にチェックを入れたり、大まかな出発・帰宅時刻を記入できるようになっていた。そして肝心の奉仕活動のリストには、日付と子どもたちの氏名、ひとりひとりの子どもが向かうべき場所の住所やその日会う人の氏名などが記載されていた。

シリルはリストの最初の数ページをめくり、自分の名を探していく。すると6ページほどめくったところに、その日のシリルの仕事内容が書かれてあった。どうやら今日は、とある個人宅での窓ガラス清掃のようだった。そしてそこに書かれてある住所と氏名を見て、シリルはかじりかけのビスケットを机に落とした。

 

ヤンセン通り 15s

ポール・ソーントン

 

シリルは机の上にあった小さな紙切れに住所を書き留めると、リストに自分の出発時刻も記さず、急ぎ足で連絡室と主調理室を抜け、指定された家へと向かった。