tête-à-tête 65

突然失礼いたします。リディア・ソーントンさん、ですね?私どもは、こういう者ですが。大変、申し上げにくいことなのですが、……数日前、ご実家のお父様が何者かによって殺害されました。

なあその煙草って、ムショの労働で得た報酬?

鮭のステーキ、それから目玉焼きでも食わせろ。ネズミ色したムショの麦粥なんて、思い出すだけで気が滅入るわ。

これしか方法はなかった。赦してほしい。

気を確かに持つのよ、リディアちゃん!叔母さん、今でも信じられないの。リディアちゃんのお父さんみたいに、誰にでも優しくて家族思いで仕事にも懸命に打ち込むような人が、いったいどうしてこんな目にって……。物盗りの犯行かしらね?

ご遺体とご対面なさいますか?

リディアさん、つかぬことをお伺いしますが、リディアさんは過去にレイノルズ容疑者との面識はありましたか?

4年間、待っててくれ。愛してる。

弾は込められているかしら?縄はどこから吊せばいい?

知らないとだけ言え。他には何も言うな。

え、あの子のお父さん、殺されたの?それじゃもしかしてクラスのみんなで参列、とか?何それ超めんどくさーい。

被告人は乳幼児期、実の父から身体的虐待を受けており……

第6区、ポプラ通り、38a。久しぶり。言われたとおり、来たよ。

『おはよう』

台所兼食堂のテーブルに食器を並べていたシリルの背中に、リディアは声をかける。シリルはリディアのほうを向くまでもなく、ぺたぺたという足音で彼女が裸足なのを悟った。

『靴下履いて。体、冷やすだろ』

リディアはいつもの赤いパジャマにクリーム色のカーディガンを羽織っており、シリルの想像どおり裸足で食堂に入ってきた。リディアはシリルのそばへ行くと、シリルの腕に触れ、頭を傾けて寄りかかった。シリルはリディアのぶんの食器をすべて並べ終えると、リディアに言った。

『どうした。よく眠れたか?おはようより、もうこんばんは、だけど』

『ありがとう、退治してくれて。私を助け出してくれて、ありがとう』

シリルにはあまりにもわかりすぎる言葉だった。シリルは自分の腕に置かれたリディアの手に触れ、優しくポン、ポンと叩いてあやす。リディアは言葉を続けた。

『それから、逃げてごめんなさい。こっちに来て、また会いに来てくれて、今でも好きでいてくれて、ありがとう』

『全くだよ。おかげで俺もこんなだ』

シリルはそう答えると黒い髪を掻き上げて、右こめかみに今も残る弾痕をリディアに見せて笑った。

『傷と言えばね。ちょっとだけ、いいお知らせがあるの』

『?』

リディアは少し恥じらいながら、カーディガンを脱ぎ、パジャマのボタンを3つ4つ外すと、振り向いてシリルにうなじと両肩を見せた。今までしつこく無数に残っていた擦り傷やあざが消え始めているのが、シリルの目にも見て取れた。シリルは静かにパジャマの襟を元に戻してやると、彼女にカーディガンを羽織らせた。

『ハンナから聞いてるかもしれないけど』

『うん?』

『もしお前さえ良かったら、なんだけど』

『うん、』

リディアはパジャマのボタンを留めながら笑顔で言った。

『聞いてるよ。私、知ってる。しょしん、でしょ』

シリルは苦笑した。

『そう。しゃしんな、写真』

『お兄ちゃんとお兄ちゃんで撮るんじゃなくて、私と一緒がいいってことだよね』

『ああ』

シリルはリディアを抱き締める。リディアはシリルの腕のなかでカラカラと笑った。

『いいよ。しょしん、撮ろう。記念しょしん。私もあなたとじゃなくちゃ、嫌だもん』