tête-à-tête 67

『このサイズだと1枚93プリエになるけど、それでよろしい?』

ホワイト・ヘイヴン市内、シリルとリディアの自宅から歩いて7、8分のところに最近できたばかりの写真館。黒い丸縁メガネに大きな耳をした50代前後の男性店主が、シリルにたずねる。シリルはリディアに聞く。

『リディアお前どう思う?このサイズなら額縁に入れて、ベッド脇のテーブルに置けるんじゃないか?』

リディアは実際に自分の部屋のテーブルに置いた様子を想像してみた。見知らぬ人のいる前では気恥ずかしくてあまり感情を出せないけれど、嬉しかった。『家族写真』にわくわくした。それでつい、笑みがこぼれた。リディアはシリルに向かってうなずいた。

『それじゃあ、このサイズで1枚』

『これでOKね?仕上がりは約1週間後になるから、お代はそのときでいいよ。それじゃあ、おふたりともこちらの撮影室へどうぞー』

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

撮影を終えて店を出ると、シリルとリディアは顔を見合わせ、もうこれ以上笑いを堪えきれないとでも言うかのように吹き出した。

『なあ、あのおっさんの耳、耳、見たか?』

シリルは紅潮した顔でリディアに聞いた。リディアはあまりにもおかしすぎて、目に涙すら貯めていた。

『うん、見た、見たよ!あの人、ハイ、チーズって言うたび、耳がぱたぱた前に動くよね?私、最初は自分のアタマがおかしくなったのかと思った!』

『後ろで誰かが糸で操ってるのかと思ったわ、俺』

『あの人、小柄じゃない?だから、黒メガネの象の子どもがシャッター切ってるっていうか、なんかそんなものを想像しちゃった』

こんなに笑ったのは何十年ぶりだろう、リディアはそう考えながら身をよじらせて笑い続けた。シリルもそんなリディアを見て、嬉しくてますます笑いが止まらなくなった。シリルはリディアの手を握る。

『次は額縁だな。骨董品店、行くか?来週、このあたりで骨董市があるみたいだから、そのときでもどっちでもいいけど』

『せっかく気分いいから、今日行ってみない?あの仔象のおかげで私たち……』

リディアはまた吹き出して、シリルの腕をぱんぱん叩いて笑う。リディアの目はシリルも初めて見るほど、きらきらと輝いていた。とても生き生きとした表情だった。シリルは思わず笑顔でリディアの体を引き寄せ口づけた。この一瞬ののちにリディアがもしまた暗いところへ落ちても構わない、そのときは自分が守ってやればいい。シリルはそう思ってリディアを抱き締めた。

『わかった。店、覗いてみよう。ああ、それと』

シリルは思い出したように言い足した。

『手紙が来たんだよ、お前らが気になってる例の【お兄ちゃん】から。頃合いを見て、会いに行こうと思ってる。もし大丈夫そうなら、お前も一緒に行くか?』