tête-à-tête 68

シリルへ

私の大好きなシリルへ。この世でいちばん優しくて、温かくて、大切なあなたへ。

あなたには感謝しなくちゃいけないことが、沢山あります。

まず。あなたはなんにもできない私に代わって、そう、私が具合の悪いときはいつだって、温かい食事を用意してくれました。

ご飯の支度って、当たり前のようでいて、なかなかできることじゃありません。

きっとあなたは孤児院にいるときから、いろんなことを自分でこなす努力をしてきたのね。

ひとりぼっちって、つらいけど、強いのよね。とっても、強い。

私は本当に何もできなくて。それであなたが、部屋の掃除を手伝ってくれたり、シーツを換えてくれたり、怖くてひとりで買い物にも行けない私を非難したりせず、いつも一緒に市場へ行ってくれました。

市場の出店でパウンドケーキを買って、『ふたりで』よく食べたよね。私はあなたといるときですらうまく食べられないのに、あなたは少しも気にしないで、黙ってケーキをふたつに分けて、包み紙に綺麗にくるみ直して手渡してくれました。食べたくなったら食べろって、あなたは言ってくれました。

ここだけの話。私はフルーツの沢山入ったパウンドケーキが、子どもの頃からとってもとっても好きでした。だからあなたのそばでほんの少しでも食べられた日は、ドキドキしたし、嬉しかった!

それからね、……そうです、謝らなくちゃいけないことも、当然、山ほどあります。

昔、私に起きたこと、10年近く、ずっと続いたこと。

あのことのために、いちばん大切なあなたに対しても、私は一度も『愛しています』と言えませんでした。言いたかったのに、どうしても言えませんでした。今も怖くて、言えそうにありません。

なぜって言うと。これはとても不快なことだから、話すことであなたを傷つけてしまったら、ごめんなさい。私にとって『愛している』というひとことは、あのことを引き起こしたあの人から、ことの最中に、繰り返し繰り返し耳元で囁かれた言葉だったからです。

私にとってはこんなに、こんなに『汚い』言葉を、いちばん大切なあなたに伝えることなんてできないって、思っていました。本当は汚くなんかないってわかっています。けれど、私があの人から植えつけられた汚れで、あなたまで染めてしまうような気がして、吐き気がするほど怖かった。

あなたはいつだって優しくて思いやりがあるのに、私を怖がらせることなんて何ひとつしないのに、……酷く気分が悪いときの私、何ひとつ信じられない気がするときの私、初めから何もかもが壊れていたんだなと考えてしまったときの私は、あなたも知っているとおり、散々、自分の体を傷つけました。それに、もっと酷いことに、あなたにぶつかっていったり、何度も何度も勝手に姿を消してあなたを心配させたりしました。あなたの隣で眠ることも、あなたの体も、あなたの言葉さえも、拒む日がありました。

私が浴室の隅でしゃがみ込んで食べ物を詰め込んでいるのを、あなたに見られたことがありましたね。あんな醜い仕事の『最中』の私は、あの人との『最中』の私と同じかそれ以上に、汚いはずです。

けれどシリル、あなたはただ駆け寄って、私の背中を抱いて、さすってくれました。口の周りには目一杯、パンくずやチョコレート、ハム、バターなんてものがへばりついていたのに、床に落ちている食べ物以外は涙目で何も見えなかったのに、息の荒い、めまいでグラグラしかかった私を、何も言わずに隣で支えていてくれました。

ありがとう。そして、ごめんなさい。私はとても汚い子です。

ああ。こんなことばかり。私は何を言っているんだろう。ごめんなさい。ぐちゃぐちゃしているの。

シリル。あなたはどこにいても何をしていても私の天使、あなたは私を連れ出してくれた、私を疑わないでいてくれた、私の肩を抱いてくれた。それだけで私は、屍からもう一度生まれ変われる気がしていたのよ、だから、ありがとう。

マーカスもハンナもマークも、皆あなたのことが大好きです。好きでないわけがない。みーんな、笑顔で手を挙げてるの。全会一致、満場一致。ほとんど毎晩のように、私たちのせがみに応じてあなたが絵本を読み聞かせてくれたこと、私もあの子たちも、みんな感謝しています。

でもね、……私としては、もうこれ以上、あなたに迷惑をかけられません。いえ。こうすることがいちばんの迷惑だってことは、わかっています。でも、いちばん大きな迷惑で、これから先も起こるかもしれない幾つもの小さな迷惑を、止めることができると思うの。

だから、赦してね。

誰か他の、素敵な人に巡り逢う日が来たら、その人を大切にしてください。それかもし、私のことをこれからも好きでいてくれたなら、いつかまた、私に声をかけてください。10代の頃、学生バーで初めて声をかけてくれたときのように。

それでは、ありがとう、ごめんなさい。いつまでも元気で。さようなら。

 

1887年10月23日

リディア・ソーントン