tête-à-tête 69

マーティン、

 

手紙、ありがとう。

俺は文章書くのがうまくないので、手短に。

月・水・金が空いているということなので、来週、いずれかの日に自宅に伺います。時間は午後2時頃を見ておいてほしい。

リディアも行きたがっているので、連れていきます。

ただひとつ、お願いがある。

リディアの行動に何か変わったところがあっても、それに驚いて過剰に反応したり、笑ったり、馬鹿にしたりはせず、普通に接してほしい。

びっくりするのは最初だけで、時が経てば、マーティン、君も慣れてくるだろうと思います。

それでは、来週会おう。

 

リル・ジョン・レイノルズ

 

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『なあなあ、このジャケット、どう思うどう思う?』

マーカスは家から着てきたジャケットの前を開いたり閉じたり、あるいは店のショーウインドウに映る自分の姿をまじまじと見ながら、シリルにたずねる。

『いっやあ、それにしてもドキドキしちゃうよなあ、なあ?』

『お前がドキドキしてどうすんだよ。お見合いしに行くんじゃあるまいし』

シリルは嬉々として飛び跳ねるマーカスの隣で、いつもどおりの淡々とした姿を装って通りを歩いていく。けれど煙草をくゆらせる指先は少しだけ震えていた。マーカスはそれに気づいて、煙草を奪い取る。

『あ。おいこら』

マーカスはすました顔で煙草をスパスパ吸う。そして鼻唄混じりの大きな声で言った。

『どんなイケメンなんだろーなー、楽しみだなあー』

『おとなしくしてろよ、この色情魔』

シリルはマーカスの髪の毛をグシャグシャにして、肩に腕を回す。マーカスはマーティンの手紙と封筒に書かれた住所を見、指で1件1件建物を数えながら、今日のお目当ての場所をたどっていく。

『26dの、えーと?12a、13c……16z、17n、』

そしてふたりは足並みを揃えて、ある戸建ての前でピタリと止まった。マーカスは言った。

『あった』

『そりゃまああるだろ現住所なんだから』

シリルは緊張を隠すためか、やや早口に突っ込みを入れた。

『18q。ホントにあった。それじゃ、俺が代表してベルを』

『何度も鳴らすなよ?お前、いつも【白鳥さん、今日もよい子で】のメロディーで家のベルをガンガン鳴らしやがって』

『大丈夫だって』

大丈夫と言ったそのそばで、マーカスは見事に【白鳥さん】のメロディーに似せてベルを連打した。シリルは苦笑して、ベルを押すマーカスの右手を押さえる。すると静かにドアが開く。ドアの向こうにはシリルとまるで同じ黒髪姿のマーティンが笑顔で立っていた。

『ああ!いらっしゃい』

『うっひょう、イケメン!』

マーカスは興奮気味に声をあげると、元気いっぱい挨拶をした。

『初めまして、こんちは。俺、マーカスです』

マーティンは一瞬、シリルのほうを見た。シリルはうなずいて、顎でマーカスのほうを指し示した。マーティンは笑顔でマーカスに返事をする。

『初めまして、マーカス。シリルと一緒に来てもらえて、光栄です。シリルもさあ、中に入って。ふたりとも、飲み物はコーヒーがいい?それとも紅茶にする?』