tête-à-tête 78

ホワイト・ヘイヴン市内のリディアとシリルの家。午前10時。ひと晩中シリルを『寝ずの番』で見守ったリディアは、シリルの予想どおり深い眠りについている。シリルは1階の台所兼食堂に降り、テーブルの上にまとめておいた数冊の小さな絵本を手に取った。

それらの絵本は相当年季が入っていた。それでリディア、ハンナ、マークから事前に同意を得たうえで、どこかに寄贈するなり処分するなりして手放すことに決めていた。マーカスは他の3人ほどには絵本に興味がないらしく、小銃を磨きながら『いいんじゃないの』程度の回答をして、家の裏庭へ遊びに行ってしまった。

シリルは食堂のテーブルにパンとひとり分の食器を並べ、『スープ、あっためて食え。これから本、持ってく』と紙切れに殴り書きをしてスープ皿の下に挟んだ。

 

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午前10時18分。シリルは麻袋に入れた数冊の絵本を小脇に抱え、とある教会の前に立った。リディアと話し合ってとりあえず候補として上がったのが、教会と児童養護施設、それから幼稚園だった。家を出たときは幼稚園へ行ってみる気でいたのだけれど、気がつくと足が教会へ向いていた。

シリルは数歩下がって、黒い正門の外から教会の建物を見上げた。尖った屋根が澄み切った空へと真っ直ぐ伸びていた。風が強く、凍てつくような1月の日だった。平日のためかあたりには人っ子ひとりおらず、静けさのなか、ほんのときおり烏や雀の鳴き声が空にこだまする程度だった。シリルは麻袋のなかの絵本に触れた。1冊、2冊と取り出して眺めてみた。そして再び教会の建物に目をやった。

駄目だった。自分が中に入れるとは思えなかった。代わりに近所の養護施設をあたってみることもできたけども、シリルは何とはなしに気落ちしてしまい、一度自宅に戻ることに決めた。

 

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家に帰ると、ポストに手紙が1通入っていた。マーティンからだった。封を開けると、前回と同様、丁寧な字体で用件が書かれてあった。

 

シリルへ。

 

先日は会いに来てくれてありがとう。

僕個人の話になってしまい、申し訳ない。実は僕、とある古書店で働くことにした。そこの親父さんから店を譲り受けることになったんだ。

面倒を見ている例の子どもたちも遊びに来れるような、そんな雰囲気の書店にしたいと思ってる。もちろん、君とリディアさん、マーカスたちも、いつでも大歓迎です。

今週、22日からぼちぼち店に出ることにしたので、気が向いたら遊びに来てくれると嬉しい。念のため、住所。

 

ストラストヴィーチェ書店

エスター通り 29k 6f

(朝10時から夕方5時まで。通りを挟んで向かいにある食堂は、サンドイッチが美味しい。是非、リディアさんと訪れてみて)

 

それでは!

 

マーティンより