tête-à-tête 81

『おいしい』

エスター通り、ストラストヴィーチェ書店の真向かいにある、こぢんまりとした食堂。通りの往来を観察できる窓際のカウンター席に、シリルとリディアは隣り合って座っている。リディアは注文したハムサンドイッチをひとくちかじると、シリルのほうを見て噛み締めるように言った。

『うまいか?じゃあ俺も、』

シリルも同じように自分のハムサンドイッチをかじる。

『うん。うまい』

『でしょう?でもね、私がこれを食べておいしいって思える本当の理由はね、』

『うん?』

シリルは指についたバターと【当店の特製ソース】を舐めながらリディアのほうを見る。

リディアは静かに微笑んで言った。

『隣にこうして、あなたがいてくれるから。私にはそれだけでいいし、それがいちばんなの』

そしてリディアはもうひとくち、サンドイッチをかじった。

『ありがとう、』

シリルはリディアの髪をくしゃっと撫でる。そして体を自分のほうに向けるよう頼んだ。

『?どうしたの?』

リディアは不思議そうな顔をして、体の向きを変えてスツールに座り直す。するとシリルが両腕を大きく広げて、笑顔で言った。

『これはエロスと友愛のハグだ、受け取りたまえ、僕の女王』

リディアも大笑いをしてシリルに腕を伸ばし、ふたりでハグを交わす。シリルはリディアの頬に自分の頬を沿わせて言った。

『さあ、とうとうキミがイケメンに対面する時が来たぞ。今日の帰り道、もしキミがその目のなかにハートマークを埋め込んで浮かれ騒いでいた場合、姦通罪としてふたり分のサンドイッチとコーヒー代を僕の懐に戻していただこう。よろしいかね?』