tête-à-tête 99

ホワイト・ヘイヴン市内。マーティンの自宅で1泊してから数日後の昼の2時。シリルは煙草を買いに家を出る。

その日は昨日までとはうって変わって、随分と暖かくうららかな日だった。シリルは近所のよろず屋で煙草を1箱だけ買う。釣り銭をミリタリーコートの右ポケットに入れると、買ったばかりの紙箱を開け、煙草を1本取り出し、火を着けた。そして街頭でしばし物思いにふけると、以前絵本を寄付しようとした教会のある方角へと歩き出した。

数分後。相変わらず居心地の悪い、黒の大きな正門の前にシリルは立っていた。コートの右ポケットから釣り銭をすべて取り出すと、シリルは5枚ある硬貨のうち1枚を選び、残りはポケットに戻した。

門にはどうせ内側から鍵がかかっているのだろうと思いきや、試しに片手で押してみると、予想を外れてスッと開いた。シリルはつい自意識過剰になって、周囲に人がいないかどうかを確認してから、敷地内に一歩足を踏み入れた。

教会の入口へ行くと、ドアは開放されていた。建物内部の照明はすべて落とされていたが、暗がりのなかでも内側の様子をはっきり見ることができた。入口を入ってすぐのところーずらり整然と並ぶ長椅子の最後尾の横ーには、古めかしい木の賽銭箱が置かれていた。

シリルは手にしていた1枚の硬貨を賽銭箱に投げ入れた。そして教会内部の全体像を見ようと数歩下がったとき、後ろからひとりの男性に声をかけられた。

『信徒さんですか?』

シリルが振り向くと、そこには白い髭を生やした50代前後の体格の良い男性が、優しげな笑顔で立っていた。

『いえ。すいませんでした。失礼します』

シリルは顔を赤らめぎこちなく一礼すると、急ぎ足で立ち去った。白い髭の男性は笑顔のまま、遠ざかるシリルの後ろ姿に大きな声で言った。

『寄付をありがとう。またいつでもいらしてください、お待ちしてますよ』