tête-à-tête 105

ホワイト・ヘイヴン市内、シリルとリディアの家。玄関のベルが一本調子で鳴る。1階の台所兼食堂にいたふたりは、緊張した様子で顔を見合わせる。

『俺が出る。お前はここにいろ』

シリルは普段からの取り決めどおり、リディアには来客の応対はさせず、自分ひとりで玄関へと向かう。今後は銃をドア付近に保管しておいたほうがいいのかもしれない、シリルはそう反省しながら用心深くドアを開けた。

『やあ、』

ドアの向こうに立っていたのはマーティンだった。走ってきたのか何なのか、顔は上気し、肩と胸で大きく呼吸しながら白い息を吐いている。シリルは驚いた様子でマーティンに言った。

『どうしたよ。マラソンでもしてきたか?』

『入っても?』

マーティンは息の上がったままシリルにたずねる。冷たい空気が気管に入り込み、苦しさで反射的に咳き込んだ。

『もちろん構わんけど、どうし……』

シリルが話し終えるのも待たず、マーティンはシリルにいきなりハグをして、そのまま素早く家のなかに入った。呆気にとられたシリルは急いでドアを閉めると、廊下をずんずん歩いていくマーティンを追った。

『おい、どうしたって聞いてるんだよ』

マーティンはリディアのいる台所兼食堂に足を踏み入れる直前で立ち止まり、くるりとシリルのほうを向いて言った。

『ねえ、銃をぶっ放すってどんな感じ?』

『あ?』

『僕にも撃たせてもらえないかな』

『薮から棒に何を言ってんだよお前、』

シリルは眉をひそめて言った。

『誰がどう見たってお前はそういうことをする人種じゃない。何があったよ』

『……マーティンさんなの?どうしたの』

リディアも出てきて不思議そうにたずねる。マーティンはふたりの顔を交互に見、大きな溜め息をついて打ち明けた。

『父に会った。とうとう、こっちに来た、』

シリルとリディアは驚いてマーティンを見た。マーティンは今も乱れる呼吸を整えようと、胸に右手を当てて大きく息を吐いた。

『僕は今まで、嘘をついてきた。父親にはこっちに来てほしくないと言った、』

『ああ。それは俺も同じだ』

シリルは静かに相槌を打って答えた。するとマーティンは首を横に振った。

『それ、嘘なんだ。そうじゃないんだ、』

マーティンは沈痛な面持ちで叫んだ。

『僕は父親を殺したい、父に対しては恨みしかない、今更だけど、僕の子ども時代を返してほしい、そうとしか思えないんだ!』