tête-à-tête 112

ホワイト・ヘイヴン市内にある、かつてシリルが訪れた教会。2月23日の午前11時。祭壇の手前から入口付近にかけてびっしりと並べられた長椅子のひとつに、眼鏡をかけた気弱そうな青年と白髭の司祭が並んで座っている。司祭は穏やかな笑みをたたえて青年に言った。

『よく決断されましたね。今後はもう、何も心配することはありません』

青年は不安げにたずねる。

『本当に、大丈夫でしょうか』

司祭は青年から受け取った白い綿の袋の中身を確認し、再び彼に念押しをする。

『大丈夫。これは私どもが責任を持って回収・処分いたします。あなたは晴れて自由の身です、すべての怒りと怨恨から解放されるのです。そう、それから、』

司祭はドーム型の天井を見上げ、思い出したように言った。

『アヴァリエを脱けたいと申し出てくる若者の数は、ここ最近、確実に増えてきているんですよ。やはりこの国に移住して以来、心の乱れが整い始めたとおっしゃる方は多いです』

青年は眼鏡を外し、ズボンのポケットからくしゃくしゃのハンカチを取り出して鼻をかんだ。司祭は青年の肩に手を置き、優しく言葉をかけた。

『銃を持ってきてくれて、ありがとう。繰り返し言いますが、あなたは大変勇敢な方だ。さあ、もう自由なのですから、人生、お好きになさい』

青年は席を立つと、涙ぐみながら深々と頭を下げ、司祭のもとを去って行った。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

青年が教会の敷地を出て行くのを確認すると、白髭の司祭は銃の入った袋を持って教会の地下納骨堂へと降りていく。重厚な鉄のドアを開けると、黒髪の司祭と信徒らしき若い女性が彼を待ち受けていた。女性は恭しく頭を下げると、司祭から袋を受け取って中身を確認し、袋の紐を絞ってから黒髪の司祭に渡した。

『ゲラン神父さま、ただいまシュトレーゼマン神父さまからいただきました袋の中身は、この私が謹んで確証いたします』

黒髪の司祭・ゲラン神父は女性信徒にうなずくと、聖職者らしく落ち着いた所作で袋を受け取った。そしてシュトレーゼマン神父にも深くお辞儀をして、ふたりに言った。

『お忙しいなかふたりとも、ご協力ありがとう。この銃を含め、回収した武器はすべて、私が責任を持って主教のもとに届けます』

そう言うとゲラン神父は、納骨用の戸棚のドアをひとつ、ふたつ、みっつと開けていく。それらの棚のなかにはおびただしい数の銃器が詰め込まれていた。シュトレーゼマン神父は満足げな顔でゲラン神父に言った。

『アヴァリエから流れてきた分だけでも、じゅうぶんかもしれませんな。正直、あと数十丁は欲しいところですが。対立教派を弾圧するには、とりあえずは数でものを言わせませんと』

『おっしゃるとおり、』

ゲラン神父は笑って答えた。そして自分の横に立っている女性信徒の肩に手を回して、彼女の頬に接吻した。

『そしてこうして私の愛人ダフネも、協力してくれているのです。なんとまあ、喜ばしいことでしょう。さて、差し当たっての最初の標的は、ドルパ・ドネルン派でしょう。これから彼らがどう潰されていくか、見物ですな』