tête-à-tête 117

ホワイト・ヘイヴン市、リディアとシリルの自宅。日曜日の午前8時半。リディアは自分の部屋で、両脚を肩幅に開いて壁の前に立ち、壁に貼りつけたハート型の標的に照準を合わせ、両手で拳銃を構えている。

『お前にはどう見ても似合わない、』

リディアのベッドで上半身裸のまま羽根枕に寄りかかっていたシリルは、煙草をふかしながらリディアに言った。

『その格好で拳銃持たれても、間抜けとしか思えんわ』

赤いパジャマの上にふわふわの白いガウンをまとったリディアは、鏡の前で上から下まで自分自身の姿にチェックを入れるも、シリルの【評価】には納得がいかないような口ぶりで答えた。

『そうかしら。私みたいな脇の甘そうな人に限って、暗殺者並みのテクニックがあったりするものじゃない?』

シリルは両拳を天井に突き上げるようにして腕を伸ばすと、大あくびをして言った。

『小説の読み過ぎ、妄想狂だな』

『もう。あなたほんとに夢がない』

『そんなロマンティックな夢のなかでお前に人を殺されちゃあ、俺もたまったもんじゃないわ』

リディアは自分の小銃を袋に収めると、シリルのもとにトトトと駆け寄り、袋をベッド脇のテーブルに置いた。

『私の銃は、あなたに任せる。好きなようにして』

シリルは吸いかけの煙草をテーブルの上の灰皿に立てかけると、リディアの腕を掴む。リディアはベッドによじ登って、微笑みながらシリルの右の鎖骨に手を伸ばした。

『ここにふたつ、ほくろがあるでしょ』

『ああ』

リディアはシリルの鎖骨の上にある、ふたつのほくろを撫でて言った。

『このふたつのあいだに線を引いて、それから縦に2本線を入れたら、うお座のマークになるね』

『随分、無理矢理だな』

うお座の方は、やっぱり水がお好きなのかしら?湖へは、いつ行く?』

リディアは少し身を屈めて、ふたつのほくろに順番に口づける。シリルはしばらくのあいだ考えると、リディアの頭にガウンのフードをすっぽり被せて言った。

『もう少し暖かくなってからがいいかもな。さもないと、お前みたいに白い服着た雪女につけ回されるかもしれん。雪道に小さな足跡がびっしり、みたいにな』