tête-à-tête 121

酒場『ブラック・マスト』の裏。隣の貴金属商店とのあいだにできた細い通り道に、数人の青年たちと初老の男性がいる。商店の外壁に寄りかかる男性を取り囲むようにして、青年らは立っている。そのうちのひとり、背の高い金髪の男性が、地面に置いたトランクケースから1丁の銃を取り出して言った。

『これは新品だけど、特別に安くしとくぜおじさん』

初老の男性は首を横に振って答えた。

『いや。金額には興味がないんだ。先ほど君に渡したように、私は今のところ金には困っていない。なんなら後日、追加で1,000ダレルほど持参しようか』

『1,000!』

青年らは顔を見合わせて驚きの声を上げた。金髪の青年は口笛を吹いて男性を【賛美】した。

『さすが人生の先輩、頼りになります。で、こちらの銃はどう?』

青年は地面にしゃがみ込むと、トランクケースの奥のほうから眩しい金色の小銃を抜き取り、立ち上がって男性に渡した。

『こっちのよりも口径が小さいけど、初心者向けだよ。軽いし。装填も簡単。何しろ、デザインがいい』

『なるほど、』

初老の男性は右手で銃を構えて言った。

『これならポケットの中にも入れられそうだね』

『とりあえず金は、さっき店でもらった分でOK。ただしさっきあんた自身が言ってくれたように、【追加寄付】なら随時大歓迎、拒む理由がない。この店には今後も来るつもりで?ミスター……えっと』

『ソーントン、』

男性は静かに名乗った。

『ポール・ソーントンだ』

『ポールさんね、』

金髪の青年は細長い指で顎を搔きながら笑って言った。

『今後ともお世話になりますよ。ボクらのような若い者どもには、アナタのようなパトロンが是非とも必要だ。とりわけ最近のボクらは新しい【ゲーム】に乗り出してね、余興を真剣に行うにはやはり資金が必要というわけ。期待してますよ』

 

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夜明け前。ソーントンは繁華街・シトルリアから数十分かけてゆっくりとホワイト・ヘイヴン第6区【ポプラ通り】へと歩いていく。やがて通りに入っていくと、端のほうから戸建てを1件、1件、指折り数えていく。そして38aの表札が出ている家の前で止まった。

ソーントンは薄暗い通りに立ち、しばらくのあいだ建物全体を眺めていたが、左隣の家で部屋の明かりがつくなり、急いで通りを出て姿を消した。