tête-à-tête 123

レニー・クレセントの住宅街の前に広がる、大きな公園。フランが出ていったあと。マーティンはブランコに乗り、リディアが後ろからその背中を押している。シリルは少し離れたところで煙草を吸いながら、マーティンにたずねた。

『お前ってもしかすると、溜めに溜めてから怒りを爆発させる人?』

『まあ、そうなんだろうね。しかも溜まっていることを、本人すらぎりぎりになるまで気づかないっていうね』

『きっと、根っからの優しい人なのよ、マーティンさんは』

リディアは規則的にマーティンの背中を押す。するとマーティンはリディアに指示を出した。

『リディアさん、もう少し強く押してもらって構わないよ。僕、勢いつけて、うんと高いところへ行きたい』

『勢い余って1回転するなよ、』

シリルはブランコに乗ったまま宙返りをし、着地に失敗して前方に投げ出される哀れなマーティンを想像して、つい笑ってしまった。

『第2の落馬死亡事故を起こさないようにな』

『もう!落馬、落馬って、みんな何かにつけてそればっかり言うんだから!』

マーティンは脚を地面に伸ばし、ブランコの揺れが止まるのを待った。やがてブランコが完全に停止すると、目の前の広大な公園の敷地を指差して言った。

『僕、めっちゃくちゃ走りたい。ちょっと行ってくる』

そう宣言すると、マーティンは黒のウールコートを着たままで駆け出した。シリルはニヤニヤ顔でリディアに言った。

『あいつ、ストレス溜まると全速力で駆け回りたくなるタイプだぜ。あいつ自身が馬そのものなんだよ』

リディアはブランコに腰掛けて、マーティンの走る姿を見守っている。

『そうね。銃を持たせたら、ちょっと怖いことになりそう』

『んだな。ところでさ、』

『うん?』

シリルは少し照れて言葉を続けた。

『お前、カッコイイよな』

『え?』

リディアはキョトンとした顔でシリルを見上げる。シリルは頭を搔きながら説明した。

『さっき言ってくれたこと。私の夫に謝ってくださいっていう、あのひとこと』

『ああ、』

リディアはまるですっかり忘れていたかのように答えた。

『前のめりな発言だった?勝手に夫にしてしまって』

『いや、』

シリルはおもむろにブランコの前にひざまずくと、リディアを見つめて言った。

『びっくりしたし、嬉しかった。ありがとう』

するとリディアはシリルに口づけて笑った。

『お安い御用です。次回はあなたのこと玉座に座らせて、この人は第一級の我が家の警備官です、愛の門番ですって、世界中にふれ回ってみせる』