2021.04.28 散文詩:Let His Secrets Be His Own Secrets

午前。木枠の窓を開けて、実すぐりの済んだ隣家のりんごの木を眺める。こうして眺めている僕自身の姿をふざけて誰かにロートレック風に描写してもらい、遙か遠くの街に住む彼に贈り物として郵送できたら面白いだろうにと思う。

暇だから想像してみたのだが、僕と彼が古ぼけた傷だらけのテーブルを挟んで差し向かいに座り、ウォッカと見まごうような小さなグラスに注がれた酒をちびちび酌み交わし、ふたりしてテーブルに肘をつき脚を組みして、ああでもないこうでもないと些事をめぐり談笑している。実のところそのときの僕は目の前にいる彼自身に探りを入れようと思えば幾らでも入れられるのだが、直球を投げることは僕の趣味ではないから、笑顔で彼の胸の周りを衛星のように迂回している。なぜなら彼のものは彼のものとしてそこに居座らせてやりたいし、単に尊重したいからだ。

それで僕は彼と鼻と鼻がくっつき合うようなポジションに位置しながらも、同時に椅子を5センチ後ろに引いたような心持ちで彼を見ている。彼がすべてを僕に差し出さないこと、差し出すまいとしていることが、僕には逆に嬉しい。

どうだろう?なんなら隣家の老婆にお願いをして、りんごの実をふたつ分けてもらって、ひとつを彼の家に届けに行ったとしたら。たぶん、相変わらずのしれっとした顔を僕のほうに斜めに向けて、黙って手を伸ばすだろう。その姿を想像したら、なんだか吹き出しそうになった。