「今んところ誰にもバレてはいないね、プラトーク被ってるし。何ならウィッグつける日もあるしね」
「とりあえず、てっぺんだけで良かった」
「てっぺんね。トン……あー気持ち悪」
「大丈夫?出しちゃう?」
「……いや、……大丈夫」
「トンって?水飲む?」
「今はいらない。トン?」
「てっぺんね。トン……って、あなたさっき言った」
「ああ。トンスラって言おうとしたの」
「逆河童とも言えそう」
「アルミ鍋の蓋か何かでも乗せておこうか」
「かえって人の目を引くでしょうそれじゃ。ウェルチはどう?飲める?ぶどう」
「飲んでみる」
「ちょっと芽衣。どこまで飲むつもりよ」
「味がわかんないんだよ。だからわかるまで」
「お腹壊すよ。夕ご飯も入らなくなるんじゃないの」
「私は今を生きておりますので」
「でも、いい知らせだったじゃん。そこまでひたむきに今を生きなくても済みそう。リラックス、リラックス」
「なーんかさあ、不思議だよねえ」
「何が?」
「きっと他のみんなも同じこと言うと思う。いい知らせで良かった、安心したって」
「そりゃあ普通は、そういうふうに言うでしょうよ」
「そうかね。そういうもん?だってさ、死なんて怖くない、永遠の生命を与えられているんだからって言うすぐそのそばで、【無事で良かった!】って言うんだもの。自己矛盾じゃん、みんな」
「誰だって怖いでしょう、死ぬなんて。そこはさすがにみんな、本音と建て前を使い分けざるを得ない」
「じゃ信じてないってことだ」
「だって、所詮人間だもの。ケーキは?チョコレートケーキあるよ」
「その上に乗っかってる赤いのだけ食べる」
「はい、どうぞ。どうする?あと30分くらいで動けそう?私、家まで送るよ」
「うん。ありがとう。45分くれる?そしたら立つ」
「オッケーです。とりあえず落ち着くまでここで座ってて……あ、そうか。だからバレなかったのね?」
「?」
「ほら、神父さん。髪の毛のこと。プラトーク被ってれば、最低限」
「ああ。でも聞かれたよ、そのほっぺたどうしましたかって」
「おっと、危なーい」
「ギリ、セーフかな。どうだろう。親知らず抜いたせいですとかテキトーに濁しておけば良かったかな」
「頭と腕の跡見られなきゃ平気でしょ」
「探り入れられたけどね、結構。土日あまり来てないねって」
「だって、それどころじゃねえ?今週末も会いに行っていい?」
「面倒でなければ」
「面倒なわけないでしょう。気にしないの」
「サンキュ。じゃあ、そうだなあ、また水炊きでもやりますか」
「OK。私、材料買い揃えて行くから。それとキムチとかも、いる?」
「大人のポッキーをよろしくたのんます」