もうそろそろの時分です-13

(7月中旬。朝の成田空港。)

 

カレドニアン・スリーパーは予約できなかったし日程も1週間ずれたけど、フライトとお宿は確保できたから許してね」

「ああもう全然オッケーだわよ。ありがとう」

「それでね、私、機内持ち込み荷物の中にね」

芽衣さんのためのお菓子がいっぱい♪」

「うん、ちょっとそれ違うんだけど。じゃなくてね、本当ならお留守番をお願いするはずの」

「もしかして定男」

「うん。ほら」

「……首がもげかかってますなあ、定男さん」

「ほつれがねえ。かわいそうだから機内で縫い直してあげようと思って」

「甲羅もそれとなく浮いてるし。お尻から綿も出てるし」

「緑と黄緑色の糸、ちゃんと用意してあるから。往路12時間以内に何とかする」

「定男さんプレゼントしたの、何年前だっけ」

「えー?覚えてない。6年くらい前?」

「個人的には一人でトイザらス行って買ってきたのが恥ずかった」

「ふふ。ありがとう。あ、そうそう、予約したホテルなんだけど、シングルルームに簡易ベッド押し込んだ部屋だから。芽衣には全期間中、簡易ベッドで寝てもらう」

「は?」 

「嘘。運良くね、キングサイズのベッドのお部屋が取れたの。だからベッドの上に仕切りでも立てて、そうだなあ、右80%は私、残り左20%はあなたのスペースってことにしない?」

「それなら簡易ベッドのほうがまだマシだわ」

「朝起きたときに床に落ちていないよう、気をつけてね。それと冷蔵庫と電子レンジがついているはずだから、スーパーへ買い出しにでも行って好きなときに食事して。私は一人でホテル内の高級カフェへ行くので」

「なんで別行動であたいが貧乏飯」

「私って意外とサディスティック?まあいいや、これからチェックインしてセキュリティ抜けましょ」

「セキュリティか……」

「何かご不便なことでも?」

「帽子、脱ぐよね」

「普通はそうね」

「そうなるとあたいのトンスラが」

「ウィッグは?」

「ちっこい金具ついてるから、外してバッグに」

「頭、ちょっと見せて」

「ほい」

「大丈夫よ。寒村地帯の畑に麦の穂が数本立ってる程度。ハダカデバネズミも仲間が増えて喜んでる」

「つるっぱげのほうがマシやねん」

「あっという間に終わるって。セキュリティ抜けたら搭乗ゲート近くで朝ごはん食べよう。ほら、きのこの山も買ってある」

「遠足かーい」

「そうよ、遠足じゃないの。しかも道中お目当ての方に会えずに空振ったらウケるわね。私、昆布と焼肉のおにぎり買って食べたい。機内食が出る時間まで持ちそうにないもん」