(類の家にて。)
「ね、お味噌汁作ってくれたのは嬉しいんだけど、長ねぎの輪切りがぜーんぶつながってるんだよね、芽衣さん。何をどうしたら、こういう不思議なことになるのかしら?」
「すべての輪っかに箸を通して遊ぶのはどうでしょうか」
「食べ物で遊ばない」
「失礼。嫌なら召し上がらなくても」
「いえ、感謝していただきますよ。それよりもあなた、仕事中にバランスボールの上で瞑想されるとすっごく気になるんですけど」
「今日は初心にかえって創世記1:1から……」
「トンスラ姿だとそこまで真面目に考えているようには見えない」
「あー。トンスラと言えば」
「何。熱い!ねぎがほんとにどこまでもつながってる。舌、ヤケドした」
「類の言うとおり、言われちゃったよ」
「言われちゃった?誰に何を?あ、誰かにヅラがバレたってこと?」
「それもあるんだけど。ほら、その、ショーンさんの件」
「……あ。あー。そういう話?」
「うん。類の見立てどおりだった」
「ほーらね?私の目、節穴じゃないんだから。それで、答えは?何て伝えたの?」
「類に言ったこととほぼ同じ内容だよ」
「つまり、結局ショーンさんとも私とも、あるいは他の誰ともってことね?」
「ご名答」
「気まずくならない?」
「運良く、何も悪いことには。これからも教会に来てください、いなくならないでくださいとは言われた。いなくなったら元気がなくなるって」
「ふーん。よっぽどご執心なんだ」
「妬いてる?」
「べーつにぃ。気にしないわよそんなこ……ねえ、炊き込みご飯の具、これ大き過ぎない?ベビーコーンまるまる1本って、何これいったい」
「とりあえずわたくしからの愛情と思っていただければこれ幸い。ああそうだ、1点聞きたいこと」
「何」
「もしあたいがブタだったら、類さんはどうします」
「ブタ?何それ」
「ショーンさんに言われた。アナタがハゲでもトンスラでもブタでも構いませんって」
「ブタっていうよりウォンバットって感じねあなたの場合。いっつもお尻振り振りしてるし」
「つまりウォンバットでも構わないと?」
「別に何とも。そもそも前にも言ったけど、ハダカデバネズミの親戚じゃない、トンスラ頭のあなたって」
「人を好きになるってのはそういう感じ?」
「恥ずかしいから私にじかに聞かないで」
「あたいはそういうことには疎いもんでねえ。ああいう家に生まれたもんだから」
「それはあなたのせいじゃないじゃない。それよりもデザート」
「冷凍キットカットならあるよ」
「じゃそれいただく……ねえこの沢庵も全部つながってるんだけど!あなた小学校の家庭科、通信簿いくつだった?」