もうそろそろの時分です-31

(1週間後。芽衣の自宅近くの公園にて。)

 

芽衣。キックボード好きなのはいいけど。あなた病み上がりなんだから」

「今は柴犬もスケートボードをたしなむ時代だからね」

「別に柴犬限定じゃなくても。サモエドだってやろうと思えばやるでしょ。ねえ、それよりもう帰ろうよ。缶コーヒー飲んでてもベンチに座りっぱなしじゃ、私寒い」

「ワシは帰っても聖書を読むくらいで、他にやることがないのだ。もう少し遊んでいくから、類は帰ってくれて大丈夫」

「ねえ芽衣

「んー?なんなら代わりにキックボードやる?うひょー楽しいー」

「引っ越さない?」

「はい?」

「私と一緒に暮らさない?」

「え……えっ?」

「ふたりでもう少し広い家に引っ越して。ご飯だったら私が作るから」

「いや。あの。嬉しいんだけど」

「介護なら任せてよ」

「いやまだそこまで重病でもお婆ちゃんでもないんで。いや、そーゆーことではなくってですね、あたいはその、恋愛的には類の気持ちには応えられ……」

「体の関係がどうのってこと?」

「いやあの、……まあ、はい」

「別に気にしないわよそんなこと。それよりもね芽衣、私、あなた見てると死んだ弟のこと思い出すのよ」

「おと……死んだ弟って」

「うん」

「何それそんな話今まで一度も聞いた……」

「話しても仕方ないかなーと思って」

「類、類は隠し事多すぎるよ。恋愛のことといい、その亡くなった弟さんのことといい」

「ゴメンね。3つ年が離れてるから、私が22であの子が19のときだったかなあ。バイクで事故ったの。トラックとぶつかって、跳ね飛ばされて。ほとんど即死だったみたい」

「それは……、で、あの、なんであたいを見ると弟さんのことを思い出すの」

「今のあなたハゲてるから。弟、スポーツやってて、髪の毛短く刈り上げてたから」

「ハゲってあの……ワシリイ掌院も類も、どうしてこうハゲ、ハゲって……」

「あなたみたいなハゲなら、みんな好きになるわよきっと。教会に来る人たちもきっと『あ、この前倒れたハゲ』って思うんじゃない。私、これってたぶん、母性本能だと思うの。女の人が好きとか、そういうこととは全く別の次元で。だから、芽衣、私あなたと暮らしたい。あなたの面倒、見たい」

「それはまぢで嬉しいんだけど。でもその、やっぱりあたい、将来的にパートナー婚とかそういうの、資格ないし……」

「結婚とかそんなのどうでもいいわよ、そばで生きててくれれば。あなたはただ、いてくれればいいの」

「それで類はまんぞ……」

「満足よ。ええ満足ですとも、おハゲさま。愛するハダカデバネズミのためなら私、頑張ってジャンバラヤでも何でも作っちゃうわよ。だから、私のこと、幸せにして」