もうそろそろの時分です-35

(教会の大聖堂内。受付そばにて。)

 

「シスター。マリヤさんは今日は聖堂の中で仕事します。外は寒いから」

「OK。じゃあMary、拝観客でいっぱいになる前に、ローソク灯しておいてくれる?」

「わかりました。私も自分のぶん、何本か灯しておきたいので」

「なんならあなたひとりで30本くらい買ってくれてもいいのよ。はいこのいちばん高いの、1本300円」

「相変わらず商売うまいなー……」

「Mary、今、何て?」

「いえ、何でもありません。それじゃ私、仕事しますので失礼しまあす」

 

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(聖堂内の聖所。)

 

「May。ローソクはもういいと思います。こちらの椅子に座ってください」

「はい。ありがとうございます。失礼します」

「聖堂の中は暖かいね。この前の日曜日には、ノラネコも入ってきたんだよ」

「ホントに?」

「ホントです。かわいい縞々のネコでした」

「そっかあ。そしてこれから掌院は、この聖堂で主教としてお祈りをなさるわけですね。忙しくなりますね」

「私、ホントは教会もキリスト教も大っ嫌いだったんだよ」

「え?」

「父がとても厳しかった。暴力は絶対にないけど、私の教育にはとーってもシビアだった」

「お父さまも教会関係者で?」

「うん。やっぱり修道司祭だったね。だから私、学生の頃は、神学の勉強なんてホントに大嫌いだったよ」

「へえー。意外だな」

「今ではね、父も80を過ぎてリタイアして、スコットランドの家で静かに暮らしているよ」

「それで掌院はもうスコットランドへは」

「うーん。もう帰らないね。あっちには私の大事なものは、もうないからね。Wifeには浮気されたしね」

「……すいません、笑っちゃいけないんだけどつい笑ってしまいました」

「May。ちょっと立ちましょうか」

「?」

「はい。私とあなた、隣で立ちました」

「?どうされました?」

「私、185センチ。May、あなたは160センチ」

「はい」

「私、背が高いデブ。あなたは痩せていて、ハゲのチビ」

「今度はハゲのチビかよ……」

「May。私はねMay、」

「はいはい。何でしょう」

「私はハゲのチビのお父さんになるよ。私にとって、ハゲのチビは太陽みたいです。結婚はできないし、恋人にもなれないけど、私はこのハゲのチビをずっと心で守ります。神の御前でそう約束するね」

「掌院」

「デブって呼んでいいよ」

「いやそれはやめときます。あの。ありがとうございます。それ以外に何と言っていいか」

「And, one more thing」

「Yes?」

「What I said months ago. I'll take it back,」

「何をですか」

「私何度も言ったね。私は掌院だから何でも見えるよって。あれは間違いでした、ウソでしたね。あなたのつらい思いを、私全然見てなかった。知りもしなかった。ごめんなさい」

「そんな。謝ることでは」

「May。あなたはこれからきっと、もっと幸せになるよ。どんどん変わって、どんどん成長する」

「えー。そうかな。そうかなあ。掌院、またヘンなもの見てません?」

「私、そのことだけは、間違いと違うと思う。そこだけは、私正しいと思ってる。チビでハゲの太陽は、私のいちばん大切な人だから、絶対に幸せになるし、大きくなるし、私がそれを助けます。Look at me, May」

「はい」

「大事なこともう一度言います。あなたはこれからきっと、絶対に、幸せになります。私がそれを助けますから、必要なときはいつも私のことを頼ってきてください。私についてきてください」