もうそろそろの時分です-44

(3月下旬。教会にて。芽衣が教会の正面ドアを磨いている。)

 

「あ、ハゲマリヤさん、こんにちはあー」 

「ねえハゲマリヤっていうのはやめて、新しいあだ名考えない?ハゲマリヤさんのハゲが治ってきたから、そうだなあ……」

「アンナさんとエイレーネーさん、確かにあたいのハゲは治ってきましたけど……」

「そうだ!ハゲマリヤさんの髪の毛って剛毛そうだから、トゲマリヤさんとかツノマリヤさんっていうのはどう?」

「タワシマリヤでもいいけど、語呂がねー。字余りよねー」

「そうなのよねー、やっぱりトゲマリヤさんが第1候補かしら……あ、ワシリイ主教さま!」

「ああ、これは皆さん、こんにちは。今日は暖かいね。私ちょっとマリヤさんに用事があるね。いいかな?」

「私に?何でしょう」

 

※※※※※※※※

 

(教会敷地内の庭にて。)

 

「May、今日はね、いいものを持ってきたよ私」

「いいもの?」

「うん。これ、Mayとルイにと思ってね。十字架ネックレス」

「えっ、いいんですか?!」

「もちろん。ふたりにあげる。ルイには新品のもの。Mayにはこれ、昔私が若いときに使っていたものね」

「今でもお若いですよ……って、こんな綺麗なものいただいちゃって、ホントにいいんですか?」

「自由に使ってください。私、今つけてあげる。ちょっと後ろ向いてください」

「後ろ……いやあ、後ろはハゲがまだ……」

「ハゲでもブタでも気にしないと、私言ったよね。だからMayも、気にしない。さあ、後ろ向いてください」

「ちぇ。はーい」

「……はい。ほら、キレイにできました。それと」

「まだあるんですか」

「うん。これでアタマ隠すといいね、ハゲ気になるなら。こうしてこうして」

「え、スカーフ?」

「うん。これはね、私の妹が使ってたもの」

「妹さんいらっしゃるんだ!知らなかった」

「私と大きく年が離れていてね、まだ41」

「負けた」

「Mayはまだ若くてキレイです。ああ、よく似合っていますね。持ってきて良かったね」

「ルイのもそうだけど、こんなにいただいてしまって、本当にいいんですか。私になんて、勿体な…」

「私、もちろんルイも大切な仲間だけど、特にMayは私の家族になってほしいね。だから、私の古い十字架と、妹のスカーフと、両方持っていてほしいね」

「主教さま」

「デブショーンでいいよ」

「いやそれはやめときます。すごく嬉しいですけど、でもあの私なんか……」

「私とMayは一緒になれないけど、私はそれでも一生、一緒にいたいね。私の言っていること、伝わっていますか」

「はい……」

「良かった。なら、嬉しいね私。そうでした、ルイは今日はどうしていますか?」

「……あっと、ルイなら今日はちょっと具合が悪くて、家に」

「どうしましたか?大丈夫?」

「はい。本当は私今日1日、そばにいるつもりだったんですが、平気だから仕事行って来いって言われて」

「そうですか。では今日はもう、作業はやめて、帰ってください」

「えっ、でもまだ何もやってな……」

「大丈夫です、May。ガラス磨きもローソクつけるのも、私がやるね。Mayはルイの看病をしてください。ルイがMayの通院を助けたように。これは主教の命令だからね、まっすぐ家へ帰ってください」