もうそろそろの時分です-47

(その日の夜。ペンションの1階ロビーにて。)

 

「May」

「はい、何でしょう」

「私たちおかしいね」

「何がでしょう」

「私、こっちに座ってる。Mayはそっち。私とMayとのあいだ、最低でも2メートル離れてるね」

「いえ。普通です。男性と女性がふたりきりでいるのは良くありませんから」

「ここロビーだよ。私、Mayのこと好きだけど、こういう場所でヘンなことしないよ。しかもこれは、いったい何ですか」

「何がでしょう」

「これ。Yarn phone.」

「糸電話ですね、はい」

「なんで私たち、糸電話でお話をしていますか」

「これもまた、男女が近づき過ぎないためです」

「Mayあのね、自分の服装を鏡で見るといいよ。それは【たぬき】というものですか?」

「ああ、これ」

「全身ぬいぐるみだね、それ」

「着ぐるみと言います」

「なぜそういうものを着ていますか」

「男性を誘惑しないためです」

「私、たぬきには恋しないね。しかもあっち、あそこ見てください、サルの剥製があるね」

「ああ、確かにありますね」

「私、たぬきとサルに囲まれた場所でそういうムードにはなれないね」

「楽しいでしょう、フフフ。家から持ってきたんですよ、この着ぐるみも、糸電話も」

「だからMayはスーツケースで来たのね、たったの1泊旅行なのに」

「はい。あとで類とも遊びます」

「そういえばルイは何をしていますか」

「部屋です。なんか、会社に電話入れなくちゃいけないからって」

「忙しい人だねルイは。それはともかくとして、May。少し近くへ行っていいですか?私、話しにくいよ。はい、糸電話返します」

「ちぇっ」

「はあ。どっこらしょ。……ん?May!」

「はい何でしょう」

「Mayの髪の毛、さっき食べたdinnerのにおいがします!」

「ああ。ミートソースだ」

「いったい何杯食べましたか。May、あなたは痩せてるのに山のように食べるね」

「3皿とちょっとかなあ」

「デザートにバニラアイスも食べてたね、山盛り。お腹壊すよ」

「おいしかったです。ごちそうさま。明日の朝食バイキング、何食べようかなあ?」

「breakfastは何時からでしたか」

「7時からだったじゃないかなあ?」

「今何時……まだ21時ですか。May、良かったらここでもう少し話しませんか」

「OKです、私なら大丈夫ですよ」

「ちょっと質問したいこと、あるね。答えてくれたら、私嬉しい」