もうそろそろの時分です-53

(ワシリイ主教の部屋にて。)

 

「下のコンビニで飴買ってきました、」

「私に?」

「はい。黒糖飴。甘過ぎるかな」

「どうもありがとう。ルイはどうしていますか?」

「また会社の上司から電話連絡が入って、つかまってます」

「旅行なのにね。ちょっと、かわいそう」

「はい。それで類の分もお菓子を買おうと思って、部屋を出てきました」

「そうですか。ああ、立ち話は良くないですね、May、窓際にソファがありますから、あちらで座ってください」

「ありがとうございます」

「そしてごめんなさい。緑茶のtea bagがなくなってしまいました。お菓子は残っていますが、飲み物はポットのお湯しかないです」

「お湯で大丈夫です」

「ごめんね。さあ、どうぞ。このcup、綺麗な絵だね。日本の陶磁器は、綺麗なものが沢山あるね。ああそうそう、飴いただくね」

「どうぞ、袋ごと………あの、それでですねワシリイ主教、」

「はい。何でしょう、May」

「ひとつお聞きしたいことがあったんです。ずっと聞きたかったこと」

「何だろう」

「あの。どんな感じだったのかなあと思って。結婚生活って」

「ああ、そうね、」

「20代とか、結構若い頃に結婚されたんですよね。アリさんもいて」

「うん。そうね。24?25?その頃かなあ」

「早かったですね」

「うん。でもね私、ホントは結婚なんかしたくなかったんだよ」

「え?」

「あのね。うん。したくなかった。えっと日本語では、させられ……」

「そうだったんですか?お見合いみたいなもの?」

「うん。教義の話になるけど。2004年に教義の内容が変わって、monkじゃない結婚した修道司祭も掌院になれるようになったんだね。昔より自由にはなった」

「でも、別に結婚しなくてもいいわけですよね?」

「ホントはね。でも私の父、厳しかったからね、オマエもちゃんと家族を持ちなさい!とうるさく言ってきたね」

「ああ、なるほど」

「でもねえ。wifeはねえ、私に協力してくれなかった。私が教会で司祭やったり、掌院になったりするとき、助けてくれなかった、supportしてくれなかったね。もともとあんまり仲良しじゃなかったからね」

「そうでしたか……。でも、アリさんがいるのは嬉しいでしょ?主教に似て、その、えーっと、ハンサムだし」

「おやまあ!ワシリイまた褒められた」

「お世辞じゃないですよ」

「お寿司?」

「いえ。何でもございません」

「うん、まあね。彼は面白いね。見ていて面白いよ。私と全く違う人生歩んでいるね」

「……でもあの、アリさんは全然教会とは関係のない仕事をしてるってことは、後を継ぐ人が」

「Spot on. ハハハ。そうです。私ひとりね、司祭とか主教とかやっているの。父はもうretiredだし、私で全部終わっちゃうね。少し、寂しいね」