もうそろそろの時分です-70

(ワシリイ主教、我に返り、握った芽衣の右手を咄嗟に離す。)

 

「I'm sorry. ごめんなさい。私は…」

「いえ。大丈夫です。お気になさらず。それよりも主教さま、お誕生日おめでとうございます」

「May。ありがとう。覚えていてくれたんだね」

「忘れませんってえ。でも、真面目なクリスチャンならまず最初に【復活祭おめでとう】と言わなくちゃダメですね。それでですね、私、主教さまに誕生日プレゼントを用意してきたんですよ」

「You didn't need to…」

「ハハハ。いいんです。私が用意したいから、しただけです。はい、これどうぞ」

「…包み紙を破いてもいいですか?」

「どうぞどうぞ」

「……May。この聖書は…?」

「私のひいお婆ちゃんが持っていたものです」

「So you weren't actually the only Christian in your family?」

「Yes, I was. お婆ちゃんは仏教徒だったんですが、いろんなこと勉強するのが好きだったんです」

「And those scribbles and drawing are……」

「Oh, I'm glad you noticed. Yes, that's by me. 私、よく落書きして遊んでました。お婆ちゃんの勉強の邪魔ばーっかりしてた、はははは」

「And you're going to give me this? I mean, can I have it? Something as precious as this? For my birthday? 」

「Of course. Remember me every time you see the drawing. I'll never leave you, though」

「Thank you. Thank you so much, May. What can I say……」

「もう一度右手を出していただけますか、主教さま」

「May。私にはもう何も誓わなくてもい……」

 

芽衣、以前そうしたように、ワシリイ主教の右手に接吻をし、微笑む。)

 

「私はどこにも行きません。少なくとも死ぬまでのあいだは、地上の世界に残って、主教さまと類のために生きていきます。それが私の仕事だと思う、他にはなーんにもできないけど」

「May……あなたはいつ、そんなふうに成長しました…」

「I love ya,」

「May」

「ハハハ。I just keep practising saying these words. Love. Love. Looove. 'Cause I still don't

know what it is like to love。さてと、そろそろ大聖堂に行きましょうか。復活祭の後片付けをしないとね、」

 

芽衣、そう言って立ち上がると、ワシリイ主教の両の手を握って笑う。)