もうそろそろの時分です-71

(教会内の庭、キンモクセイの木の下のベンチにて。)

 

「はあ。さてと。造花は全部、この段ボール箱に詰めました」

「May、それとても大きいね、その段ボール箱。膝の上に置くとMayの顔全く見えないね。私は横に座っているから見えるけど。下に置いたほうが良いと思うよ、みんなMayの顔が箱に変身したと勘違いするね」

「じゃあこの箱にマジックで顔を描きましょうか」

「どうせMay、ヘンな絵を描くね。たぬきのぬいぐるみを着るような女性だからね、Mayは」

「あの着ぐるみ、あったくて動きやすくて好きなんだけどなあ。主教さま、今度着てみます?」

「私?いいよう、恥ずかしいよう。それよりもMay、髪の毛生えてきて良かったね。もうハゲじゃないね」

 

(ワシリイ主教、そう言って芽衣の髪に触れる。)

 

「でもハゲじゃなくなると、教会のみんなに有名だったハゲマリヤが消えてしまうね。それ私、残念に思うね」

「なんでハゲマリヤってあだ名ご存知なんですかっ」

「女性信者の皆さん、いつも言っていたもの。ハゲハゲハゲって。Mayはみんなから好かれているからね」

「それって喜んで良いのか悪いのか…」

「あらおふたり、そこにいたの」

「シスター」

「グレース、どうしましたか?」

「いえ、何でもないのよ、その造花を受け取りに来ただけ。箱ごともらっちゃう。あらやだ、結構重たいのね」

「大丈夫ですかシスター」

「平気、平気。それよりお邪魔しちゃってごめんなさいね、あなたたちってばお似合い」

「グレース、私たちはそういった…」

「いいんですよ主教さま、隠さなくても。ここの教会は聖徒数も少ないし、教義自体が寛容だし、あなたがたが相思相愛だっていうのは何だかんだ言ってみんな知ってますもの」

「いやその、グレース、それは……May、なんでMayも笑っているのですか、あなたもここではきちんと反論をしないと……」

「反論?反論なんていたしませーん。愛の形はいろいろですから、私はウソはつきません。主教さま、もう少ししっかりなさらないとハハハハハ」

「Mayの言うとおりかもね、Sean。主教ならもっと男らしく、堂々と。じゃあ、私はこれで。13時まで小聖堂にいるので、何かあれば声をかけてくださいな」

「お疲れさまですシスター」

 

(グレース、笑顔で小聖堂へ戻って行く。)

 

「なぜ私だけイジメラレル」

「堂々となさっていればいいんですよ、あはははは」

「May、あなたはホントに、いつからそんなに変わりましたか?私にはちょっと、信じられないね、ビックリだよ」

「簡単です。類と同じように、あなたがそばにいらっしゃったからです」

「私が?ホントに?」

「ええ、もちろん。電車内で初めて声をかけられたときはイラッとしましたけど」

「イラッとしたのですか」

「ええ、それはもう。何だこのオヤジ?って」

「やっぱり私は50代のオヤジなのですね…」

「50代のオヤジがナンパしてきたんだから、イラッとして当然ですよう」

「いえ私はナンパをするために…」

「ウソだねーウッソ」

「……はい。白状します。告白します。私、あれ、ナンパというやつだったね。Mayが天使に見えた。オーラです」

「主教だからね、何でも見えるよ!でしょう?」

「はい。May、良く知ってますね」

「そりゃあね。何でも知ってます。私もよーく見てるから。主教さまがサンドイッチのパセリを残すのも、あごひげを右手で引っ掻くクセも、ちゃんと知ってます。これからもずーっとそばで見させていただきますよ。さあ、小聖堂に寄って、それからお昼ご飯、行きましょうか?」