もうそろそろの時分です-72

(5月下旬。芽衣と類の自宅。類の部屋にて。)

 

「あーあーあー、だるいし痛いし吐き気するしーもうイヤッ」

「死にますか」

「死にはしませんけども、芽衣さん、そばにいてくだ……いや、てか、熱はないのでおしぼりは」

「いりませんか」

「いりませんし、しかもあなたそのケロリンのお風呂桶、いつどこで手に入れたの」

「以前教会の信者さんからいただきました」

「なぜお風呂桶」

「私はご存知のとおりハゲでしたので、これで頭を覆うようにとお達しがございました」

「かぶっても透けて見えるでしょこれじゃ。あーもうイヤイヤ、芽衣、手握ってて」

「出産ですか」

「産みませんし生まれもしません!あー」

「お腹は空きまちたか」

「食べようと思えば何とか」

「煮込みうどんなら作ってあります」

「まぢで?嘘でしょう?いつからそんなに段取り良くなった」

「類さまを見て学びました」

「あらやっぱり?そうでしょそうでしょー、私って手際良いものねー。偉いでしょ?私」

「はい」

「じゃ、褒めて。褒めて褒めて褒めちぎって」

「調子に乗るといけませんのでやめておきます」

「ふん。何よ意地悪」

「それではうどんをよそってお持ちいたしますので、しばら…」

芽衣

「はい」

「ありがとね」

「はい?」

「私、信頼してるよ。芽衣なら任せられる。なにせ、長ネギを切っても昔みたいにつながったままじゃなくなった。ちゃんと切れてる。だから今日のうどんもきっと合格点超えると思う」

「そうだと大変に光栄なのでしゅが」

芽衣

「はい」

「14年前?15年前?勇気出してあなたに声かけて、良かった」

「ナンパでしたかね、あれは」

「もう、まるで夢がないんだからあなたは!こっち来て!」

 

(類、そう言って芽衣の腕を引っ張り、芽衣の頬にキスをする。)

 

「うどん、お願い!私の好きななると、めいっぱい入れて持ってきて」

「かしこまりましたお嬢様、おうどんを召し上がりましたら午後はワシリイ主教さまが病者祈祷にいらっしゃいますので、いかにも病み苦しんだご様子で主教さまをお迎えくださいませ」

「もうショーン、来なくていいのに!」

「あと1時間半ほど、もうそろそろのお時間でございます。それまでは私お手製のうどんをたんとご賞味くださいませ」

「……芽衣

「はい」

「なんか焦げ臭っ」

「あへ?うはぁやっべうどん火にかけっぱだった!!」

「芽ー衣ー!!」

 

 

 

~おしまいでしゅぅ~