月夜に狩る人、喘ぐ人。-3

「いったい何だアイツは、何様のつもりだ?

毎回毎回、俺の服装にケチつけやがって」

「ねえ。お皿の上でカチャカチャキコキコ鳴らすの、やめてもらえない?2メートル以上離れててもじゅうぶんうるさい」

「あー?だったら耳栓でも装置してろや。それに、何だこの鶏野郎は。パッサパサのモッゴモゴじゃねえか。ソースはねえのかソースは?」

 

すると食堂奥の食器棚からコショウの瓶が飛び出してくる。

 

「コショウじゃない!」

 

ハーバート、コショウの瓶を腕で払いのける。瓶の蓋が外れて、中身が床にぶちまけられる。

 

「オジサンの名前は?」

「おい、それが人にものを訊くときの態度かお嬢ちゃん?」

「あたしならリカ…」

「知ってるがな。リカコ・ストライピーだろ」

「なんで知ってるのよ。ていうか、ストライピーってのは省略してくれない?」

「お前にお似合いのあだ名じゃねえか。とりあえず上半身、鏡で見てみろや。しまっしまが」

「やめて!もうウンザリする」

「だったら食ってみるんだな。お前、それが今日のお前の夕食か?」

 

リカコ、ストローでミルクセーキをかき混ぜ続けるだけで、いっこうに飲もうとしない。

 

「貧乏でメシにありつけないわけでもあるまいし。ほら、ストロー舐めろ。ぽたぽたミルクセーキ落としてばかりいないで、ちゃんと飲め」

「あたしはあなたの名前をお伺いしてるのよ、」

「ハービーだ」

「ハービーですって?」

「ハーバートだからハービーと呼べと言ってるんだよ。またの名をハーバート・ゴブラー教授と言う」

「Gobbler(がっつき屋)というだけあって、まあよく食べますこと」

「そうだ。文句あるか」

「先ほどのピエロさんが言ってたとおり、ご自由にすれば?あたしもそうするから。ただ、テーブルのあちこちに食べ散らかすのはやめてもらえませんこと?下品」

「お前みたいにミルクセーキ1杯ごときでメソメソしてるよりはマシだ」

「メソメソなんかしてないわよ、うるさいわね!だいたいあなた、それが夜食?23時過ぎよ?こんな時間にニワトリ丸ごと1羽食べるなんて、あなたの胃は【時差出勤中】なの?しかもさっきから何?足もとでがちゃがちゃ何をしてるの?」

「これだよこれ、」

 

ハーバート、青色のポリエチレン製バケツをテーブル下から引っ張り出し、中身をリカコに見せる。

 

「ホレ、しゃぶり尽くした鶏の骨だ」

「やだ汚いの見せないでよ!」

「本当は牡蠣の貝を入れる用のバケツだろう。なんで前菜に牡蠣が来なくて先にニワトリなのか、俺にもわからん。おい牡蠣!」