ハーバートの叫び声とともに、牡蠣のオリーブ油漬けがテーブル上に現れる。
「俺は黒オリーブが嫌いなんだがな。まあいい、食って食ってすべて食い潰してやる。お前もしっかり食え、」
するとリカコ・ストライピーの眼前にグリーンピースの乗った皿が現れる。リカコ、怯える。
「豆を食ったくらいで風船になるわけがない、ほら食え」
ハーバート、牡蠣を次々と口に放り込む。リカコはフォークでグリーンピースをつついている。
「あなたもう少し自分の体を気遣ったほうが良くってよ、それ、どう見ても油まみれじゃない」
「そういうお前こそ、その筋張った腕を何とかするんだな。それじゃ腕立て伏せ1回もできんだろ」
「監視しないでよ」
リカコ、ようやくミルクセーキをひとくちすするも、しかめっ面でグラスを押しのける。
「何だ、どうした」
「人工甘味料の味だわ、スキナロンAZCね」
「そんな贅沢言える立場かお前は、」
「香料と加工油脂のおかしな匂いもする。粉末ミルクセーキね。100グラムあたりの脂肪は何グラムなのかしら」
「お前いつもそうやって電算機みたいに頭使って食ってるのか」
「13年ほど前に身につけた特殊技能よ。この香料はたぶんエセカロール5番ね」
「お前の話聞いてると吐きそうになるわ」
「ハービーさん、あなたはいつもそれだけ大量に食べて、あとで気持ち悪くなったりはしないの?」
「食い物のほうがマシだ、」
「何に比べてマシなの」
「俺の腹の中で煮えたぎってるものに比較すりゃ、朝から晩まで詰め込む食い物のほうがマシだってことだよ。畜生あの裁判官、執行猶予とはいえ俺を誰だと思ってる」