月夜に狩る人、喘ぐ人。-10

「スコアって。お前何のゲームだ、そりゃ」

「ゲームじゃないわ。あたしの人生、あたしそのものよ。あたし自身を欠けさせるわけにはいかないの。それからね、」

 

リカコ、目の前に置かれたグラスと皿をすべて数十センチ前方に押しやる。

 

「最低でも周囲20センチ以内に人を近づけないようにしてる。赤外線網を張り巡らせてるイメージね、なぜってこれがあたしの、あたしひとりの世界だから」

「それじゃお前、惚れた男ともイチャイチャできんな」

「そんなことしている暇すらないわ、」

「そりゃまあそうだろう、お前の関心事は脂肪だの香料だのがメシの中に何グラム含まれてるかということだけだもんな、つまりは暇人ってことだけどな。嗚呼哀れなる逆説的存在の娘にステーキとムニエルを!」

 

ハーバートの掛け声で牛ヒレのステーキと鮭のムニエル・タルタルソース添えがリカコの前に現れる。リカコ、両手で払いのける仕草を繰り返す。

 

「あたしがあたしであることが何よりも大事なのよ、」

「悪いがな、お前はその服脱いでスッポンポンになったら即刻消滅するわ。見るからに案山子、枯れきった木の棒だ。嗚呼俺様、何と詩的な!バニラアイスクリームとスパゲッティ・ナポリタンをそれぞれ特盛りで!」

 

ハーバートの要求どおり、アイスクリームとスパゲッティが銀皿に特盛りで盛られて現れる。

 

「どうしてそう失礼なのかしらあなたって人は?ホント、偉そうによく言うわハービーさん。あなただって人のこと言えない体型してるじゃないの、特にそのお腹…」

「おうよ、せっかくだから見るか?はっきり言ってベルトをする意味がないんだよ。このベルトを外すとな、ズボンがあっという間にストーンと床に落ちてパンツしか見え…」

「結構です!見たくありません!」