月夜に狩る人、喘ぐ人。-12

最低。よくも飲み物でうがいなんてできるね」

ポリフェノール効果を狙ってのものだ」

「宇宙人のくせになんでポリフェノールなんてことまで知ってるの」

「平均的ルボール星人は皆おしなべて健康意識が高い」

「あなたを除いてね、ハービーさん」

「そういえばお前、さっき面白いこと言ってたな。自分の周囲20センチ以内には人を入れないって」

「ええ。それがどうしたの」

「試してやろうか」

「え?」

「俺が試してやろうか」

 

ハーバート、短い脚で椅子を降り、長さ250センチメートルのテーブルに沿って全速力でリカコに近づく。リカコ、パニックを起こしてテーブルの上のグリーンピース、ミックスサンドイッチ、ミルクセーキ、鮭のムニエルについていたタルタルソースを投げつける。

 

「ちょっとやめてやだっ!!」

 

リカコ、ハーバートの触覚に掴みかかり、ハーバートを投げ飛ばそうとする。ハーバート、顔に直撃したタルタルソースを舐めながら、リカコの頭の上のリボンと髪の毛を引っ掴む。

 

両者、取っ組み合いの喧嘩。そこにホイッスルが鳴る。

 

「仕切り直し!」

 

星条旗柄の帽子を被ったピエロ男が再登場する(注:ここでは最初に着ていた星条旗柄のベストではなく、お洒落であることを見せつけて「帽子」である)。

 

ピエロ男は両者に割って入り、ふたりを引き離す。ハーバートとリカコ、ともにゼーハー息づきながら、乱れた衣服を整える。

 

「両者ともに、着席!おのおのの場所へ!」

 

ハーバート、シワだらけになった水色のネクタイをいじくり、舌打ちしブツクサふて腐れながら、椅子に座り直す。リカコ、席に戻るなり、両手に顔をうずめて泣き出す。